二乗千年

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2010-01-01から1年間の記事一覧

2010-12-31

溶接工も死ねば泣く猿の檻の前 新緑過多陰ばかり楽しい犬の散歩 異世界の別れに洞窟いっぱいの花 高音に縋り付く蔦もろとも落城 猫と分かる夕暮れ住処を撫でに来る 掻き乱す糊の奥までまったき昼 雑な旅行の杭錆びてヘラヘラと笑う 張り裂けておしまい村一番…

2010-12-25

手のひらのみ震える立体視のさなかの人間 耄碌して輪廻の一部を羊に殉ずる 溝の暗がりを髪とし立つ悪ひとり裸足で 鳴く虫にテニスコートからテニスボール 休日は火花で家が好きと大輪 銀河仰ぐ網膜下に黄金の河 メモとの距離求める式日没に浮かぶ 斧の反射に…

2010-12-07

鯱入れた火事のいれものから悲鳴 山奥まるで膨らむ双眸またひとり プレハブ建つ欠けた錠菓が喜ばれ 庭とは一種の倦怠足りてしまう煉瓦 詐欺はたらく老躯に震度ゼロの話 薄暗い鳥の軌跡打ち消す位相 橋落ちて水より人が先に柱 泥の産毛受光してこじれる水深 …

2010-11-22

村人消す伝来途中の写真技術 春は内臓をねじり続けた文の嵐 幻術で気がふれ返し問いの国 日に日に傾く部屋半年後に大家の染み 全てが鉄でできた街の眼として一輪 騎乗する踏んでつんざく耳あるとき 割ってなお鳴かぬバイオリンと奏者 捨てた覆面へ迸る女生徒…

2010-11-08

飛び地の果樹脈莫大に鬱ぎ込む 夜の卵膨らむ手紙より早く 月光遮る森大昔に芽生えた殺意 凸面鏡の車から死に顔へ布 現し世の破片以外は全てカラス 猿に象牙盗ませ殖える象の母 犬の背にスプレー痕笑うべきは旅団 本の本当は地が裂け強化ガラス不意に 空に屈…

2010-10-25

蹄鉄で窪む混血児の幻 空洞を内からしごく係員 明るい世の中パンをちぎっている・いない論 犬の服裏返しに大鍋の上 ポケットから片手出しフグひらけば農場 記念碑溶け込む公園に少女着衣のまま ビルいっぱいに膝枕ぬるい血携え 空転する松葉杖が留守の小屋を…

2010-10-09

冷蔵庫しょって地割れの戸を叩く 庶民枯れゆく音近日をトロフィーでぶつ 紺ばらまき銃殺刑降る五階は無事 米落として泣く軽くなっただがもういい 激情のいかなるときも牛引いて 青ざめた帯いかに肉体指すべき 器に石吐いて燕の命がクルリ 凶作の田に昔から武…

2010-09-26

虚空の密度を持つ蠅は二秒でできている 禍々しくウェイター滑り来る泥濘 祝うに家の密着無く大声で結う 吹雪に靡く衣服の縫製部位音読 手錠は足に幻は右目に投身 霧は長い爪で歩く受胎を匂わせ 弁当の真綿照らす空中爆発 開口部のない部屋に一滴の囮 渚を指…

2010-09-16

欺いて陶芸教室にも曙光 つがいのサイ渦巻くカザフスタンに傘 花いっぱい詰めた靴下炉心に寄り添う 十字に刻む庭肌で感じつつ崇拝 炸裂する母性を明かりに帰路を這う 不死身に瓦し連ねる大樹にも似た戦ぎ 迷路も本も同じ糸を引き抜けば吹雪 箸乱れる意中に川…

2010-08-31

口に遠い触媒うねる準備室 凍る白鳥段差を越えられずに砕ける 華やぐ老人は渦巻きに例えにくい 火中の僧暗い騒ぎを目深にする 風光明媚な食肉にすくむ骨しまう 家具水没吊り橋だけが揺れている 噴霧の要項満たす恋敵砂塵と化す 蔦状の逆鱗を抜け北の旅 踊り…

2010-08-24

祭壇の残像で舞う手紙の主 レモンはみ出す糸電話にコンロを聞かせている 道さみしくないように轢いてやろうか芭蕉 蛇の目裂き母来る火花として迎えに 背を伸ばし提灯落とすずっと落ちる 城壁を滑落する指ころり独楽 牛乳をわずかに逸れて風呂の栓 霊験にまか…

2010-08-09

子供の遊んだ輪に別れの砂を敷く街 嘴が三日月を抜く愛撫の恍惚 鈍角に感染する不均衡の女体 箱の無人で笑うほど手刀の白い腕 寂寞を彩る面で向く南 掘って出す石は冷たい牛の視野 浮遊しない蝶にブルドーザー奏でる 引き戸にのこぎりも引く破片はクッキー …

2010-07-28

ただ問い合う応接室に空の水槽 草原が苦いから山小屋浮かぶ マトリョーシカに月しまい今夜満マトリョーシカ 砂利を板に括った噂が先に来る ヤシの木の外に鏡の托鉢僧 アルカリ性のカマキリに継ぎ足すチーズ 大いなる壷にせせらぐ華道家の血 縄文杉を孕むから…

2010-07-17

泣く真似する子供だという回る卵 折れてギザギザの鉛筆で歴史ティッシュに書き込む 渓谷に桜の花びらダンスで焙る 靴を貫く棒と親善大使の近似 婦女舐め合う歩道に移植された舌 食虫を介して惑星負うならわし 芽を蓋する王冠に崖かける海 足から腕に通す指輪…

2010-06-30

希有な咎町中に椰子の実を孕む 一重の紙に移り破れた坂を下る 硬直を許す弾痕に活字当てる 菓子焼いて鳥の名残を皿にする 篝火浴び井戸に戯れ返す老婆 爪先が友刺すとき頭部は下敷き割る タンク歯であれ並びに吸い付く鬱な茎 世界の果ての崖に産毛まず希望が…

2010-06-19

混声の昼間は千々にビールつぐ トカゲの死骸のそばにフエラムネヴーンと唸る 粉塵と化す壁の会釈会釈で突っ切る 書道のせがませ方キリキリと雨期を狭める 税としてせせらぎへ派生する巨像 もう車の通らない道を人々が寝だした 憚りとは塾の裏手の空想の鐘 植…

2010-06-15

(ここから2010年) 蝋再度冷え手形は銀父性の関 ポ状に沸騰する鍋この世に人がいてよ 固形物としての氷河期黙祷遮る 野と湯葉の結び目では破裂も仰々しい 教会の奥の振り子で眉間を打つ 蝶の死を以て石油の弾力試す 無声歯茎摩擦音がネガにずれ込む念写 着…

2010-05-26

神子の代で鐘の巨大な影を置く 気も首も同じ紛れるなら宇宙 結露以前に存在していたのか巨人 生きてと囁き続けるラッパに車輪の跡 屋根に登り雷に絵馬を吊る 祝賀の形態刺々しく皮膚張らずに出荷 果皮丸まる枝先を蝋燭で焙る 刑は無音この先幾許かの空中 低…

2010-05-21

用紙突き破り姪が後頭部に着く 回路の一部として発光する火口のカラス 鉄骨無形の序に猿の手雷鳴を突く 木陰を繰る湯気笑み疲れた老婆の口から 引き戸に引かれくすぶる櫂をしんがりに山河 憂い剥がすタイルに麦降る母船の傾き 光源を横切るイカの習いに血 堀…

2010-05-05

穴に立てた線香手がかりなく煙る 餌取った道具から食べヒヒンと死ぬ猿 鍋を囲む客がいた今は灰の山だ 屑畑に屑蒔く屑その屑食う屑 心臓に貝柱置く陸の民 不定の柵は板チョコ息苦しい一数える 車窓にめりこみ保つ故障したビルとの距離 草抜いて海を呼ぶすぐそ…

2010-05-04

着物が冷たい随分遠くに靡く笹舟 壁焼いて嘘はお嫌いでしょうから 吹雪き明けて紙の破れ目に靴底合う 打ち伏して銀の祭りの幅を書く シャツ山吹内部に柳として背骨 歩く牛の波紋で倒壊する家屋 深層心理に箱空けているそこにメロディー ミを場所にファを暇に…

2010-04-16

別荘の窓から放射極まる図体 公園にストロー刺して息を足す 双子双方が肩車しくぐる門無窮 大河に水牛襞を伸ばしても水牛 王宮にいないわたしが一番大きい 同じ獣の牙砂漠と幼稚園に突き出る ソフトクリーム玄関に置いて地割れに出かける 牛飼いの抑揚に背足…

2010-04-13

つくし返す春に押しつぶされた手で 足の数へ促音混ぜる火花翌日に 底を目指し一万年落ち続けるバネ 雨過ぎてなおザーと雛を呼ぶラジオ 部屋にラムネ菓子の袋を貼りしゃがむ ほだされて別れは羽化せず小夜うねる 寝てつくる暗がりが滝と流れる門 三角定規をベ…

2010-03-31

カラス鳴くかも頭痛から物差しの距離に空 未来にいる饅頭を食べている 銀行は膨らむ紙袋から手足 わたしはいったい弦で弾いてみるいい音 洗面器であった輪を持ち雨降る昔 花に首輪を付けて連れて歩く長髪 死後すぐの三半規管に熊が棲む ソファの陥没から足受…

2010-03-18

旬過ぎて大樹にぶら下がる目つぶし ナマズ逃げる図の振り出しに目薬差す ひとりにさせた星の半分はくらい いの形に曲げた片腕を渡る鳥 膝にない抑揚誰からも砂場 谷底の牧場へ髪逆立てる 獰猛な柱時計と大広間 巨眼に住む蔑みを地上から寄越す 太古の路上を…

2010-03-11

焦土の中央に宇宙ひとの形をして 斜面に四肢破れて月を運ぶ砂 泥です泥ですと信号そのせり上がる速度 鉋屑の沖から風に聳える笛 澱むゴムの白い汀を飛び出すバネ 砂蛇行した先の舟はおかわりの分 土に代わる感情がなく塩を撒く いずれチョーク自体が居場所と…

2010-02-23

歯牙前方に連鎖の真っ只中に在る 薄い台本第三者以外ガラスケース 滝をさする晩年二次的には煙 街の低温を嬲る風屋上から胡椒 葡萄からギリシャへ蔓で咎を貸す リスが降る無人の劇を見る無人 朝の来ない聾学校で渦を聴く 裏返した靴下を裏返って履く 食肉が…

2010-02-17

復讐する熊ども無数の指従え 脚注を経由した血の色に暮れる 戸二枚開かぬほど近接し庭のタキシード 夏に戻る路傍の形状記憶合金 地上から地上を撃つ昏睡の射程 筒抜けに石碑までもが部屋の中 積んだ畳から号令が帽子をかぶせる 押し黙る茎と一律に小作人 鉢…

2010-02-01

邂逅せず沼から切開する野原 旗途切れて流刑の理解を浸す乳房 安らかではない女の手の骨しかし秋晴れ 窓から見える街が内臓まで透けて見える 糸通され浮く牛舎に魚拓差し込む 半身は居住を拒む蜃気楼 深い畑に花びらためて病床刺す 首外して置くこの隙間を逃…

2010-01-26

連綿と手摺が絡めとる野菜 ここに積み木を無力だ交響曲が光る 絶滅種を飲み込んで羽化する国道 漠然と雲であるため昨日は雨 針を抜く母一塁に二人いる 頬と海へ同時に触れる大きな泡 霞む駅舎末端では酢を垂らす 失意のまま壷の紋様に巻かれて外 雪深くて下…