2010-12-31
溶接工も死ねば泣く猿の檻の前
新緑過多陰ばかり楽しい犬の散歩
異世界の別れに洞窟いっぱいの花
高音に縋り付く蔦もろとも落城
猫と分かる夕暮れ住処を撫でに来る
掻き乱す糊の奥までまったき昼
雑な旅行の杭錆びてヘラヘラと笑う
張り裂けておしまい村一番の菊
メロン色のよその子の酸性雨の話
ヒト沈めて現世の限りを風の船
衰微の黒目に火の輪くぐりの長い待機
断崖という宇宙語射す日を読み上げよ
爆心の藁人形が鞠をつく
制御室にラムネ一粒日々疼く
鉄柱博会場大伽藍椀も空中
焦がれたブラスバンド部に天気予報の雨
狐鳴く奈落雅に苔充満
風微塵宇宙子鹿の斑模様
白鮮やかになることもある子守りの腕
砂よりも黙っていたい虫の息