二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2023-04-26

動くな動くなよと仏像も呼びかけてくる

温床にハッチを開く寮母の殻

脳の横に道を作る会いたいのかな

喪のパルスあるいは靄どちらにしろ降る

置かれた寿司を包む舌少し滑らせ歩く

受粉して折れる茎に惜しみなく池

畳毟る田植えの手を清めるように

己の乳様突起に触れ車庫まで歩く

老婆の書かれた垂れ幕射る飽和と呼ぶべき

パイに疼く細胞片の事象まっすぐ

中空を切り取るピストル冷えて鏡

島から先に降ろさなかったから無人

校舎の眺めが良い場所に前兆を置く

内側から皮膚押して包丁に近付く

葱畑に生えたものすべてがアダム

閉じた傘を真横に断つ雨不登校

青く透明な蟹密輸する低い合図

空飛ぶ円盤釘付けにL型の改行

果てよと猫が雨だった時計の裏から

寂寞の痣にリンクを張る涙

無闇に木を傷付ける露出した山奥

馬に貸した肉に誰かサボテン植えた

袖まみれの劇は一過性の人体

筒の束を巻き戻せば溜め池がある

テレビの前漂う室温だけが光

ゼリー質のみ滑り落ち桶の衰弱

昼の豚を焼けば夜の豚退路を断つ

電源抜いて壁に家具を塗り籠める持続

水没してコップを汲む日記の終わり

神社が個体に戻るまでの穏やかな町

信号に青く車中泊する地形

実を割って撫でる中身の遅い街

家という尖った型に風流し込む

磯の形を贖いと見る未到達

迂回して宿る魔性に酸の雨

満場一致の呻きで撫で釜茹での刑

境地にストーブ抱く暖かい葉書も焼こう

手裏剣ピピと飛び汚染してくる逃げろタクシーで

コップにわずかな牛乳残し床下膨らむ

前後左右は垂直にずり上がる泥

道も眠れば川か頭から櫓を引き抜く

アを百書く空中に円柱状に

扇の形に引きずり出す舌こちらと手を打ち

星座の最暗部に強盗する定めの子

旅行という刑を目立たす背景色

天井を継いで倉庫に吊る心臓

この夜明けは恨めしくとても長いジーンズ

万有視力を閉じ縞から這い出るひとたち

蒸発した人形匂う里の春

痙攣を浴びた米に時間の概念

浴槽に固形の目を泳がせている

補助輪異様に回る崩れた露店の下

朗々と吸われてミスリル銀採掘

谷底の味に第三者化する失恋

歯を舐めつつ鎖でしごく墓の整列

航空ですねと君は眉間に燃料垂らして

真っ青な泥がこんもり待つ内科

望みはひとつプレス機に森の動物たち

首をもいでいかない雲に黒さはいらない

飾る気のない鉄が穴から次々出てくる

図中の国は黄色に犬の舌を絞れば

密度が移る夢の試しに石は浮き

陸は不要とある石碑抜き担ぎ回る

井戸それ自身内側に傷を付ける旅行

脈拍に応募券貼る祭りの後

蟻を捏ねて面にする長さは問わない

四方が襖記憶飛ぶほど植樹され

段階早く埋葬はピーナッツの香り

星に似て刺身で潤う乾いた眼

まばゆいばかりに口を割らんか不寝番

枕元に調理済みの肉めくる係

頓挫する壁を階段で押すプラン

古びた鏡に手を打てば数珠繋ぎの猿

袖のみ空間に浮くとき誰を弔う

生を損なう定型に符合するマンション

魚焼く緑に焦げた山の前

巨人を飼う橋軋み滴る洗浄液

炉の導入計画焼きやすく紙へ

風鈴に風を喰わせる痩せた腕

鳥の胴にシチューを入れるためのファスナー

粘る主観を取り出す戦のまま年越し

ホテルに合うフタがひらりとかわす葡萄

姿形はいずれ書くぼくの子孫が

おままごとの火事長引く微動だにせず

泡立つ白馬に乗り銀河を水増しせよ騎士

ちぎれた根を慕う花粉あかるく絶滅

油を弾く電柱は昼を神より信じる

春の胃に潜る塹壕牙光らせ

蔦とモラルにカーテン引くありふれた避暑

腐食は水色で塗るぼく以外の合意で

屈曲がピアノを侵す肺呼吸

埋めた魚で花壇がぬるい昨夜へ飛ぶ

掴んで食べられたい徘徊だからやめない

塀を陸から剥がす靴べらどう罵る

ワニをしまう部屋垂直方向に長い

樹皮の裏に差し込むゲージ既に減り

すり抜けていくとき音か凡ひとつ

食べ頃の蝉より機械化進む義眼

無限に後ずさりできる廊下は寂しさかも

入れ子を集いと呼ぶ正しい戸のない個体

2022-08-03

ぬるい膜であやとりする見せられないが

義務からくる固形の涙を足に括る

時計の針全部下がるそうか地下か

ギターケースに師弟すっぽり弦も張る

豊かな緑撒き散らす気球なおも萌えて

通信を終えてすぐ星を映す原油

ぼくが美しく囚われる手首からする匂い

令嬢流し込んだ水たまりが王墓とは

辺境の深い凪を兆候と見る

引き算し続けてもいいですか朝が来るまで

人称代名詞にしんしんと性欲漲る

量で呼ばれる未来のぼくもバブーと言う

仕損じた射手の中央から積雪

揺り籠細長くして林の幻まさぐる

柱として力任せに箱がある

文通する街ひとつ消し飛ばす忘却

寸断日誌に手にした道路の重さを書く

腹から紙幣抜き尽くすと軽やかに鳴る武士

水を含んだパイ生地流す午後の放送

花培養しうる吹雪に至る邪法

開くと温かい本ぼくを試しているのか

分校近くの塀記憶にめり込み明るい

灯籠前くっきり時空が帯を成す

葱束ねていたベルトに穴ひとつ増やす

鏡にあどけなさを残し沼彷徨う体温

部品が三輪車にまみえるプライバシーは過度

風上にポップコーンが宿す指数

筒を折る酋長は真ん中が好き

こめかみの奥で交わる暗い滝

ごくりと池鎮まり月無差別に円く

高濃度の思念ゆすぐ新緑の窪

まだ栄えるとは知らず廃屋に犠牲

二人目の壁に乳房が貼ってある

従うべき標識に桁減らす標高

橇を置く領土くまなくメッキされ

流星強く溺れる都市の藻屑照らす

足から先に揺れる叔父にまごころの風

閉じる概念またの名を町にひとつの会館

椅子を開けと同盟がそそのかすんだ

自然に浮く球の自然は内向的

切手を貼りまた噛む拘束具は甘い

叡智を拒むガラスの水路に奏でた跡

宇宙空間呼ぶ厳しい一固体の巡礼

トランプめくり合う他人峠に苦の閃き

図面嫌う無地主義者の華麗なる放牧

哀れんで主語を省けばまた月蝕

楽しんで絵に書いたから腐る工場

墓は正しいその石もケーキ潰す限り

六か七を見せてから雨の音聞かせる

贅肉が舐めていく人語に言う管

形より先に醤油を貸し与える

肩に脳はあれと枝分かれする腕を見つつ

煮立つ渋滞の主権に卑しく輝く針

火だるまになって見上げる雲の爪

容器絞って出すマヨネースがすべての考え

井戸でも銃口でもいい忘れさせてくれ

土偶の胴管状に犯す多肉植物

尖る梢の指す村に住む煙として

不死率い夜襲に及ぶ雨季の亜人

廊下に置いても氷は解ける愛など死ね

塵しゃぶる蝋燭の根に祭りの痕

暴力的に村全部が跳ぶジャンプ台

上方向にノコギリ引く近親線だ

ときめきつつ和室に正座して吃る

古墳の下も古墳大量のクリーム隔て

箱から涙絞り夕日は収束する

地元のわずかな鉄汲むとはトラック来るとは

雪より静かに働く滑車夜を夜のまま

あらと聞こえたきり余白になりそよぐのれん

辺境の聖たり図形を成さぬ縞

中年のしと舐めかかりひとり事務机

糊をほぐせば卑怯なぼくらがみんな見ている

火鉢から曲が聞こえる立ち眩み

籠手広げ夢想の武士を引きちぎる

凍てついた刻ミノ宮に魔界の幸

標識がどうも青過ぎて奇怪だ

鈴切って耳に貼る音になりたくて

操作できる空は平らかペア組んで

ベルト七つ巻いたまま脱がれ赤い他人

聖杯己の輝きに潰れ爆心指す

圏外のブルドーザーに雑巾がけ

提灯白く嘘もこのようにハサミ開く

イコールみたいな橋から蟹降る結ばれて

飴を包んでいた紙は燃やせる話し相手

自我に代えて山河を詰めるここから過去

遠い主体を長い手で掘り起こして無視

虫の艶を舐め尽くす夕焼けの激しさ

溝を剥がしてひとつの出入り口とひとつに

栞にした靴下から想定する人体

痩せた鯨がねじ込まれ備え付けのブザー

誰でもいい町から交換可能な誰

着膨れして下水広げる誘拐犯

掛け軸の十字性から非業の髄

零号術式監視下に撒き散らす慈愛

宮を抜き射精痕絶命痕一糸

数珠繋ぎの実物と中央を競う

シンバルの余韻を研ぎ続けて崖に

近所にある足は二人用の人体

鹿来て鹿産む大腿骨内側の冷え

見事な雨がそそり立つ心臓から高音

2022-02-19

橋から切れた数珠少しずつピアノを打つ

錆が事象としてわからない虹は書けるのに

拷問と轟音いずれも生の範疇

溜まり場突く接続詞の芯喉から深く

目眩ましから鋭角に開けた農園

いずれダンサー跳ねさすバネ凛として逸脱

歳時記の夏を毟るまた訪うため

ひとりと小鳥は同じだから貫いて良い

使われた忘却炉にぐねぐねの鉄

充填の穴さらけ出す荒野の風

バス発進するたび揺れる首吊り妖精

先に湿る床に移せば魚影の情

容積で話す子供ら舟を沈め

鉄琴の音は近況ありません

ガラスの国で血管飾る挫折として

頁と漢字で書く聳えていくのがわかる

神を干す甘い鞘引き抜けば鮭

牛もくもくしかし地上に牛のすべて

柵コの字に青い空だ問いも逃げたか

道巻いて公民館に奥の部屋

下駄箱雄々しく飲む肉襦袢輝くとき

徐々に広くなる地下道にいずれ窓が

電気スタンドを囲む肉が損なわれて僕

嵩増す邪気をマフラー外して誘う幹

貪るぼくに瘤ある碁盤を添える武勇

天動く復路に忸怩たる剃毛

島の広さに匹敵して突き破る錠剤

引きちぎられた部屋に合金製の椅子

大福切開する画廊に大挙して母胎

土振り払う蛾に根を張る古びたくらげ

昨日のわたしがもしいるならお手玉から声

何を祝うか円くショッピングカート抉れて

画鋲を抜くと雨季のお知らせがひらりひらり

通院するハムを包んで里神楽

排除の形態捉えきれず高原たりうる

桜割り生流し込むバキュームカー

靡く鍵で漕ぐとも見え結界の外

凍る沼に一致を捨てていく書記官

湯にあらゆる沈黙沈む皮膚の国

異境に丸みを帯びた腹這いの友は照らされ

ロシア極東に住む天女のすらりとしたまさかり

走ると土塀が口に入るおかしいのは味

謎一字欠字一字の他何も

引いておく凶のぬめりを引き継ぐ弓

どっちも出口の麦真っ青に洗脳する

チューブに空気を出し入れする覚えてないように

犬置き場に水車が回る豚料理

底を外すと心が抜ける外は雨か

階段ふたつで背後ではない背中を噛んで

錐落ちてフィナーレの死というフィナーレ

盗品のコンロで照らす冬の土

皮下のパースペクティヴは樹上に暮らしている

星の偉大な供物にただ一度の打撃

欄外に書くきれいな未開の噴火

体の両面酒で濡らし一説には川

意味だけ先に死ぬ森の先に息づく箱

麺溢れて脛を冷やす脳裏は大樹

ベッドのカーテンめくらず神父の黒十字

砂漠に痺れ薬を混ぜながら痺れてゆく

包丁平たく埋めて夜風をなだらかに

二進法の神話読み上げる弱者の喉

蛙はすぐ星に蝶番付けて畳む

床のワックス嗅ぐ首輪を外しながら

衣服干す五桁の年号叫びながら

石を洗うと透けていくかまくらの中

舌禍に百のポスターと褪せた婦人従う

客のいない託児所に雨溜めておく

雲に影貸す喜んでいる喜んで

口頭を広げて無事を見せびらかす

歯で砕く地の果てに赤組がいる

広報に行方知れずの動力炉

ビールを濾過して飲むいつかは虎だった者です

グラスに胴ねじ込む小鳥の見た洪水

褐色の霧でタクシー拾う山

火中しきりに朗読する集団ほぐされ

焦がしくすぐる仮面の波今札剥がされ

ビー玉を浮かす口閉じ会釈する

平らげた後の蝶に塗るからし明るい

立ち上るパターン化した霊長類

樹齢を買った印に赤いイルミネーション

寸劇の客船役は死後現る

コーンの缶詰きれいもう何もしなくていいのね

トラックまるごと落ちていく回りくどい表皮に

幻滅にゆっくり凍る声の主

ワープの出口に卑怯者の口選ばれる

縁側向かい合う自壊するほど強く

円卓を磨く左折を繰り返し

血潮に赤も青もあり信号機壊す

オーロラで溶けた小屋パンに塗って焼く

恩寵の淵に呪詛繰るシュレッダー

四つ脚の店主よく鳴く面を拭く

夜を見て泡突き立てる御意の形

単語的にあるだけの意識パン裏返す

閉じた口の中は卵に似て苦い

階段折れており木を接ぐ煙に従い

僕ら食用であり断面という粗大な屋上

球を通じ生首が否定するデジャヴ

器物組んで文脈破る風見台

情と情絡む下肢伝いくどい笞刑

千切れば立つ匂いに映す同じ草

2021-11-03

蝶を二画でなぞれば×進めなくなる

蛍光するかろくろ首よネビュラの如く

電極滅多刺しの畜生から戯曲『椿姫』

霧の間際を既に失う占星術

吊るされた子鹿の影に渦巻く無垢

バラ肉いつ円錐に似ていくつも去ったか

驚くべき高原に滑りこむヘラ

血を差し置いて巡るものに切符を預ける

寺領の熱わだかまるフィルムの残りに

膨れて黒ずむ袋に触手を書き足しておく

折り紙でサイレン作る古い家

裏返すと派手な影が染み出てくる叔母

味撒き散らしなお消えず野鳥園目指す

思春期の火葬に耐える架空の牙

自我まぶしてよく揉むタオルとその魂

町の何がゆるやかかわかるまで這いずる

赤い実体手近な塩を罪に問う

猿を生きたまま許したときから鳴るブザー

鏡捨てて誰というカテゴリーに戻す

甘い星降るふかふかの伏した背中に

苦しみがわかるジュースでねばつく喉

住めば都の施設に所蔵されるコピー

氷湖の台飛び越しアステロイドベルトへ

多面体に馬閉じ込め正式に馬車

遅れて待つ水槽を持つ客の光

無効な手続きする拳から立ち上る手首

瓶から出された牛乳憎まれつつ滝壺へ

顔失う地下道から湿ったネクタイ

純粋な馬上に入れ子の馬上がある

手首の静脈より静かな海固形のまま見る

牛馬相互に肉を持ちただ傾く人間

布ばかり露呈して水洗いする

峰引き抜く朱を欠く柄の言語満たし

空のメディアが瞳に揺れて功労者

品目という字塗り潰し窓を仰ぐ

桶の底を刳り貫けば灯すべき針山

犬の解剖臭で通じる支部支部

磁力と照射の狭間に誤配の銀欠けゆく

秋の木に木こりを縛る夜を覗く

月は光らず棘を持つ柱逃げても逃げても

空き家に霊を投げ込む一人称は僕

鏡にかかとだけ映す凶暴だから

口を縛り母子は息代わる代わる吐く

鴨の曲線美を削ぐ味蕾の虚ろな信号

非道の限りとはどこか月蝕始まる

仙境に霞群がる肉を求め

沼を汲みチューバに注ぐ家畜として

撲滅記録は二枚貼りあわせ糊の垂れる

クリームソーダの側面溶けた巡礼者

寸劇を並行に裂く異形の滝

ジューシーにS字の歯形が付く食パン

パステルカラーの地滑りと父取り替える

深海まで光を吸う紐状の疼き

知識が減り用紙の縦を決めかねる

川にも鶴にも超が付くただズレていく

音の失せた遠浅をポリタンクに詰める

あっけなく手押し車は手を縛られ

竹藪に胸を異境として渡す

きれいに押す表面を覆い合う紙

ツルハシで石油を打つ昼誰も来ない

持ち手として絵画から垂れてくる液体

一声の宵に鹿射る非凡な才

予知の中盗聴器を紙幣で買う客

なぜ温かい標識を首に巻いているのか

正座する音に資材を混ぜねば朝

海の向こうに赤いシャベルの刺激をください

とにかく生理的にこの町をパン戦ぐほど

肉厚な霊廟齧る奴隷の鰐

生育毎刻まれた目盛り記憶より深く

暗号が浮かぶ人体より軽く

数値の上ではここに異人がいて笑う

生産ラインを先に老人が出て海へ

昨夜の形状戻せず空を切る喝采

鍵穴に立つ検視官つまり倍

倒れた花瓶の前大自然になりつつある

前夜にも指紋を拭き取られたミシン

この落下を愚弄と呼べ浜を掘るグライダー

模様極度に拡大して文明滅ぼす

射精の記憶だけ焼かれて無邪気な牛たち

電気を体に帯びて村に持ち込む神父

裏に解体現場を持つ人格が多重

身なりがへばりつく路地は我々を失う

路上にスリッパ並べて多量の昼を浴びる

手札からダイヤを抜け絶対殺してやる

平等にトーと油が流れる横笛

銃声のふくらみつつ山と呼ばれる

範疇を石に譲る甘口のタレ

窓溶け落ちた先に馬凹む中世から

掟破りに破り返す患者のパジャマ

砂漠に沈むと向こうに出る円盤として

頭注から滾る雨する食人花

円尽くす路上の天命はしごかれ

競技的春の薄笑み掬い切れず

森ぐれて吐くやや鮮やかな墳墓

マントから分離され不実な唾液をなぞる

重くのしかかる羽根という麗しい乖離

代わる代わる笛吹き熊の中身をつづらへ

本には過ぎた奥行きにいつまでも雨音

着弾は干からびた夢かビオトープ

途切れた歌に金切り声足す公家の娘

2021-08-08

服畳んで積む際限なく木の葉散らし

鞘に嵐夢見る少女性の一幕

全校生徒の頭部で蓋するプールの時間

星も人も互いを無名の火炎と見る

タルトを焼いたまま絶望している田の深さに

酸で溶かした島を浴びたい代わる代わる

考慮の末に沼が煮えていた

ほしいままにした名も今は棚引く山

十字の袖その交点からよく響く枝

外科医の位置を靴に均す幻視下の塵

搗く餅は自己暗示に友達めく習い

疑いの壺にみっちり生えた花

稚魚の睦みに予兆を見るか人さらい

耳にしてくれと鍛冶屋に穴持ち込む

茹で卵にお湯かけて鍋空にする

ヨーヨー戻りゆく絶交した黄色い手に

険しい煙を抉れば豚の味も聳える

破れた桃の裏にくっきりと首輪の跡

体中背骨を恥じて迂回路へ

風紋に絞まる巫女のけなげな暴挙

目に蛇溜めてコンクリートのオルガン弾く

剥製が橇引く浮き世の亜熱帯

手札を手よりも大きく広げて愛の絶望

菌類も妄りに願う異なる春

密輸船に乗る突き落とす気配とふたりで

釘を袋に詰め込んでヒッチハイクする

どじょうの芯が覚醒して田を青く打つ

五円にしおれた麦を通してパティオに持つ

通行だけが並木道に短く笑う

灰一色の鮮やかさよ嬲らないでくれ

怪力それ自身も割れつつあり雲湧く

刻まれた裾引き連れて近付く軋み

神戸ナンバー燃えむしろ内部的なコーヒー

垂直な角材を舐め回す間借り

爆弾パトカー飛び込む褐色スーツの案山子に

角笛吹く粘液と呼ばれた町で

編み上がりにメットを塞ぐ苛烈な立体

根菜縦に割る刃物は郊外から来る

唖者の描く弧に白身の蠢く調べ

水没校舎に手十本指一本の兄

栞を抜いた記憶だけ生きて結ぶ庵

灰の写真を撮るこの音階も母

坂が液体なら浴びるのか二階から

物陰から続々耳を生やすウサギ

長袖の端まで皮膚咲かせる横縞

光差す辻に石浮くメロドラマ

善のほとりに曲がる中毒者と象牙

防風林を歩くもの皆囁きつつ

ラッパを振り回して海岸でガラスを割っている

目に余白のある画家が画布に二秒を刻む

文鳥と炭素を分けて逃がしてやる

簀巻き漬けた水たまり艶めくとばかりに

鎌下げた壁に添う犬となる裸

緑だ自我は激しいシグナルその農村性

ワープゾーンは遊具だがいつしか目を縁取り

意中の牛に薄くカタログ化した死角

分かると固くなる氷に催す敬語

袴長すぎてはみ出す満ち足りた暮らしを

勾玉は常に蠢くここである

空洞も物理だ抉れば種々の書物

十字を結びたがる舌を出し切る水道

高窓から濡れた手を流れなさい水

忌み切れず暈を頂く病んだ峰

熊疲れる宇宙は縁のない穴かと

無地の看板半分溶け半分は今

老婦に入れたまま目を転がすスラム街

胸像焦げ都市ごと留守になる退廃

あらゆる不当を飲み一滴となる二階

クッキー焼く静かなお母さんの肉体

行き止まりを淫らにする見事な胎動

荘厳な腹部のパースが信徒ら呑む

完全とは蔦に夜露の溶けた姫

感染呪術に迸る雪の翼与えよ

つがいのダイナモ超俗的に東を巻く

説明なく笑うかに見え後ろの他人

少女は足の指に煙草挟み傘にされる

ヘッドライトが照らす黒い海少し温暖

割れた岩に刃物に似たハーモニカ挟む

夕方を脱いで広げるまで帰る

雑巾絞る我がことのように首を欲し

きれいなシートのあることが突如の輝くボタン

宇宙に細る廃村への私的な頷き

下垂体と通じる王朝光るために

虫煮詰めた缶詰めと声殺し合う

レコードの罅を巨大に引き摺る繭

充填しては樹皮を剥ぐ僧と僧はひとり

血を抜かれた象打ち鳴らす初日の出

文法上編めば必ず闇を刺す

ドア太りありがたく熱押し潰す

弾痕を花輪で飾る質素な店

都に遠く甘い村あり舌引き出す

必然性に基づく展開図の消毒

日付けは枷その通りだ蒸し返しに来たのか

静かな胸張り詰めていく洗濯槽

煙まっすぐ断層めく見知らぬ町を

人の滑落見る山肌に繋がれた牛

オスの剥製一体ずつ焼き落ちる橋

銅板折ると走る爪痕みたいな記憶

特売日に固形の宮を死ぬほど買う

キッチンにちょうど収まる霊長類

2021-04-23

まもなく溺れますと張り紙し遅い昼食

芋雄々しくノコギリで裂く千手観音

泣く子ら夥しく不定形にハシゴ垂らす

個性が死ぬとき音立てている階下

銃口に吸われて知る輝く未来

埋めた星が引く首は数多ある目下

架空の水場を囲う樋がひび割れた静けさ

耐震構造物ふたつ密に帽子を取り合う

最小単位に蝶をあてがう粉薬

未知の言語に話者ひとり絶え間ない絶頂

月臭う腕輪を腕で満たすように

伏せた牛の光沢は指揮者を伴う

信じる目を薬草で燻す連なって

湖底の鉄新しくし続ける生身

宇宙が終わる頃ようやく浮き出す点線

釜の直径いくらか樹木に思うところあり

培養途中の枕引き抜き頭部を湿らす

脊椎で天体磨く不寝番

傘立てに鞭を詰め込む血の匂い

蒸気の届かぬ岬をラッパに抉れば糧

郊外重なり百貨店の内部が帳消し

悲しく偉大な直角が来るだけの工具

白衣の背を外から破る指の舐り

筆跡に蜂が棲む蜜浴びながら

距離を売る少女は遠く廃村に

海の前ってどこだっけ靴下を脱ぐ

家具となる木を目に斧を提げ帰る

小さくならないマトリョーシカ吊る首もない

池の形の正しく家を消費する

電気の茨を冠するテナガザルが焦点

メスぶら下げ金属探知されますように

水晶覗き過ぎて水没する末代は光

氷嚢を押している窓に鉄格子

目印に老婆を仕方なく愛す

雨あらかじめキノコの曲線忘れている

天井から火が垂れてなお暗い港

サブレにリボン結んで潰す故郷の音

カパと開けばプールに波紋拉致されて

塵溜めた桶をまさぐる小間使い

脳を犇めかず在る町をどこまでも響く

きれいなパイプを埋めた今日から回らなければ

孤独なマシンの中は広く卓球台置く

黒い動画の再生続く机下のモニター

下水に似せ着物をズルリと脱ぐナマズ

球体以外を消した愛に等しい地球

山を見て「山など」と言う人二人

カーテンよじれて週末の予定は通夜だけ

御霊棚引く寝覚めの川に常習性

死魚図形として正しく真夏日を指す

下校は紙で出来ていて歯形で終わる

神社に距離が等しいだけのカラーコーン

逆手にペンチ愛おしいもの採取すべく

号泣の直線刻みに来るシャーマン

魔境は尽きず鳴り続ける三味線の上に

別人の記憶で水を薄める滝

机をグルグル巻きにしたドアを叩くは手か

箱の口開けて焚く箱自体と闇

切手を貼った海岸が届く受話器のくびれに

光とポトリが交換できる独身寮

毎秒を受け止める朗らかな列

数字は足さずに許してと死んだ蝶に書く

深奥からしとどに濡れて森のミルク

処女ら密航また密航いかなる憎悪か

またしても切れ目のある集団の猿

発生源に地球規模の山静まり返る

蛇には蛇の形の毒ぼくには孤独

月極の仮眠の位置星形に刻む

いつか望む他人の絵になぞり書きして

燃える寺院の裾に踊る焦げ臭い犬

密葬の柩は常に立ててある

塗り籠めた杖を垂れる不確かな無垢

満開の恨みは地中を鮮やかに

空中を使わず落ちる事後のトランク

彫られなければ木ですらない工業地帯

無を包む瞼開いてコケコッコー

枕を細く割いてもハープではない悲しい

にわかに門が与えられこの世のどこかに家

ハンコで餅を搗く名前より先に狂って

原子核をおぶってあやす湯気の痴態

小説の表紙を突く鶴の方法

重油を吸う穴に歯のある休耕田

盗癖に夜行を塞ぐ砂男

絵か絵皿か眼に合う欠けた昼の暮れ

手探りで地底にくべる人の顔

天界の音は一切虫のうねり

根底に乱視を謗る玉座の黴

同時期の自供に紛れ込む吸い殻

熟女を離脱し幽体ははち切れつつ車庫へ

破れた袋からティッシュ清潔に溢れてくる

許しを請う語尾天井画を空しく満たす

花畑の中に太鼓 中だったのか

月下の海上腕章付けて真横に落ちる

十一本住めば都の生き地獄

視覚を監禁する紙越しにぬるい酢飯

木彫りの呪わしさを半身に引きずる子供

ひれ伏しても冷たい弁舌だこの床は

廃校群と同じ内向きの球なら出れない

割り箸を銜え豪雨を殺す女官

かわいい酢豚が生きているうちに鏡に映す

ファン憤然と回し何か謳歌しただろうか

2021-01-23

砂のそばで砂粒ほどの犬を拾う

尊さが降らす雪なのか肉を揺らすのは

静かなパン豊かな時代に押して開く

エビの夢は常に絶望の十三支

爛れている群れは鳥の孤独に遠く

女のシャツは生け捕りに怖い乳房を吸う

霧に縛られ等距離だから等価なぼくら

煙草から泡が出るメルヘンの内圧

胃に穴開けて豪邸ねじ込む黒い地球

階下を所蔵するゲル吐く濁った水田

恐竜図鑑で内側からランドセルを壊す

凍った鳥に降る雪は古代種の緑

夕焼けのぼくは水槽動かれず

石碑の中で風化の音聞く昔の文字

壺への移植穏やかにダシ流し込む

語り部の骨にキスするムカデの姉

百合をほどき気を確かにする奥様

危の字の車を点Aに取る信号点滅

地脈よ聞きに来い土と混ざらんばかりの歯軋り

アーチを組む途中の気体が今も胸に

赤い罫線がはっきり見え入り口もある

虫を殺しぼくはコーヒーに雨を注ぐ

メニューはチャーハンばかり動く泥みたいな店主

重ねた網の下段で運がいい排水

解説の折り目を読む目の後ろまで

失踪事件の貼り紙はる冷たい煙突

手を開けば滑り台を鳴かせる力

全粒粉の島絶海を隠し持つ

古墳に鉄流し込むバケツで窓から

コップに紳士服を詰める休憩は長い

輪の始点と終点は同じ老女がいる

発信機を飲む死角に鮮やかな村

声みたいにお湯を溜める身の程である

広大な逃げ場の裏表は同じ

ネックレスの内側太く満たす宇宙

いつも色が違うポスターに常習者

自然は人間よりチョコレートを愛する工場

知らず峠は磨かれそそり立つピストル

ぼくの冷蔵庫であるとき病院たれ食感

決闘に犬連れて行く憂鬱で

同類一瞬じぶんでありミントのガム噛む

装飾に長い直立蔓延らず

解けた洗脳剥き出しに売られフォアグラの横

島の中心の土食う予兆の深さまで

ノックで風鈴叩き割る午後に激しく線

水族館の水の量考え頭でっかち

塗りたくられ見えずスコープは浪漫の虜

電気の沼がぬるくて赤い転送エラー

否定は確かな味を持つ意味より先に

波紋の平面ブレて囲む消せない記憶

彫像逆立てるブラシ叫びにも似て咥える

戦士の首に崇高なリボン生きて結ぶ

洗剤の箱は野晒しの咎の駅

蛙の見た世界であるべくスポンジ折る

祠は潤う顎のいくつ投棄された幻

村から村へしんと静まり返る国道

額縁の外限りなく広がる皮膚

曙光空洞説螺旋に過ぎ仕組まれている

藁人形に砂漠は底なしの固体

塗装されたピザの脈を電話越しに取る

屋根より高く拿捕されてクジラの中で

鉄と女人の意志入れ替えて念仏聞く

囀りにメガネを拭くセキュリティーの死

疲れたポスター千々にひとりでに我が意の如くに

忘我の念出窓明らかに出て潰す

横断幕の増長が窓破る雨後

地上に柱盛り沢山神経症ですから

水中みたいな朝焼け含むべく大口

バケツ並べる音近付く航空便で

アトランティスの役所で所在なくくの字に

光り輝く農夫を裏返すデバイス

長く冷たい土管凍結の音響かす

長い海を渡れば花が怒り狂っていた

透明だから多数出す脚の移動は捨てられ

蜜滴る戦闘機内にお辞儀の嵐

霊感突如冴えシュークリーム異様に膨らむ

お化けみたいにだらりとメガロポリスへ手を

適量でもウサギと自我ぴょんぴょん跳ねる

鳥さん静かにしてねすぐ硬くなる男根

坂が水平に動くただ置いてあるだけの家に

前略のある世界に燃え尽きた花火

急に善と置き換えた冷蔵庫が動かない

上空から鉄の味降る赤い塔

木の股に未婚者のくぐる浮き輪がある

訂正され夜が来ず×印の痣

異常な底を引き抜くと回転する人間

老婆の耳ピンクに注入する河口

怪人の腐乱を飾る白テント

不在に揺れる紐静かにひまわり畑

巡回止まず肉汁を浴び続けるコップ

サーカス団下山燃え盛る火の輪を残し

海は広いと聞いていたが眼球だった

カーテン越しに千人いて一斉にいる

気がかりを鵺に置き換え録画する

太った茄子を切り開く何か言うかと思って

オブラートの味だけが胸を打つ悲しみ

帯ぬくい銀の液をほどよく吸って

朝を仕組みとして認めず爽やかな永眠

滝がリモコンみたいで指を捨ててしまう

想像の産物が来て「くれ」と言う