二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2022-08-03

ぬるい膜であやとりする見せられないが

義務からくる固形の涙を足に括る

時計の針全部下がるそうか地下か

ギターケースに師弟すっぽり弦も張る

豊かな緑撒き散らす気球なおも萌えて

通信を終えてすぐ星を映す原油

ぼくが美しく囚われる手首からする匂い

令嬢流し込んだ水たまりが王墓とは

辺境の深い凪を兆候と見る

引き算し続けてもいいですか朝が来るまで

人称代名詞にしんしんと性欲漲る

量で呼ばれる未来のぼくもバブーと言う

仕損じた射手の中央から積雪

揺り籠細長くして林の幻まさぐる

柱として力任せに箱がある

文通する街ひとつ消し飛ばす忘却

寸断日誌に手にした道路の重さを書く

腹から紙幣抜き尽くすと軽やかに鳴る武士

水を含んだパイ生地流す午後の放送

花培養しうる吹雪に至る邪法

開くと温かい本ぼくを試しているのか

分校近くの塀記憶にめり込み明るい

灯籠前くっきり時空が帯を成す

葱束ねていたベルトに穴ひとつ増やす

鏡にあどけなさを残し沼彷徨う体温

部品が三輪車にまみえるプライバシーは過度

風上にポップコーンが宿す指数

筒を折る酋長は真ん中が好き

こめかみの奥で交わる暗い滝

ごくりと池鎮まり月無差別に円く

高濃度の思念ゆすぐ新緑の窪

まだ栄えるとは知らず廃屋に犠牲

二人目の壁に乳房が貼ってある

従うべき標識に桁減らす標高

橇を置く領土くまなくメッキされ

流星強く溺れる都市の藻屑照らす

足から先に揺れる叔父にまごころの風

閉じる概念またの名を町にひとつの会館

椅子を開けと同盟がそそのかすんだ

自然に浮く球の自然は内向的

切手を貼りまた噛む拘束具は甘い

叡智を拒むガラスの水路に奏でた跡

宇宙空間呼ぶ厳しい一固体の巡礼

トランプめくり合う他人峠に苦の閃き

図面嫌う無地主義者の華麗なる放牧

哀れんで主語を省けばまた月蝕

楽しんで絵に書いたから腐る工場

墓は正しいその石もケーキ潰す限り

六か七を見せてから雨の音聞かせる

贅肉が舐めていく人語に言う管

形より先に醤油を貸し与える

肩に脳はあれと枝分かれする腕を見つつ

煮立つ渋滞の主権に卑しく輝く針

火だるまになって見上げる雲の爪

容器絞って出すマヨネースがすべての考え

井戸でも銃口でもいい忘れさせてくれ

土偶の胴管状に犯す多肉植物

尖る梢の指す村に住む煙として

不死率い夜襲に及ぶ雨季の亜人

廊下に置いても氷は解ける愛など死ね

塵しゃぶる蝋燭の根に祭りの痕

暴力的に村全部が跳ぶジャンプ台

上方向にノコギリ引く近親線だ

ときめきつつ和室に正座して吃る

古墳の下も古墳大量のクリーム隔て

箱から涙絞り夕日は収束する

地元のわずかな鉄汲むとはトラック来るとは

雪より静かに働く滑車夜を夜のまま

あらと聞こえたきり余白になりそよぐのれん

辺境の聖たり図形を成さぬ縞

中年のしと舐めかかりひとり事務机

糊をほぐせば卑怯なぼくらがみんな見ている

火鉢から曲が聞こえる立ち眩み

籠手広げ夢想の武士を引きちぎる

凍てついた刻ミノ宮に魔界の幸

標識がどうも青過ぎて奇怪だ

鈴切って耳に貼る音になりたくて

操作できる空は平らかペア組んで

ベルト七つ巻いたまま脱がれ赤い他人

聖杯己の輝きに潰れ爆心指す

圏外のブルドーザーに雑巾がけ

提灯白く嘘もこのようにハサミ開く

イコールみたいな橋から蟹降る結ばれて

飴を包んでいた紙は燃やせる話し相手

自我に代えて山河を詰めるここから過去

遠い主体を長い手で掘り起こして無視

虫の艶を舐め尽くす夕焼けの激しさ

溝を剥がしてひとつの出入り口とひとつに

栞にした靴下から想定する人体

痩せた鯨がねじ込まれ備え付けのブザー

誰でもいい町から交換可能な誰

着膨れして下水広げる誘拐犯

掛け軸の十字性から非業の髄

零号術式監視下に撒き散らす慈愛

宮を抜き射精痕絶命痕一糸

数珠繋ぎの実物と中央を競う

シンバルの余韻を研ぎ続けて崖に

近所にある足は二人用の人体

鹿来て鹿産む大腿骨内側の冷え

見事な雨がそそり立つ心臓から高音