二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2021-08-08

服畳んで積む際限なく木の葉散らし

鞘に嵐夢見る少女性の一幕

全校生徒の頭部で蓋するプールの時間

星も人も互いを無名の火炎と見る

タルトを焼いたまま絶望している田の深さに

酸で溶かした島を浴びたい代わる代わる

考慮の末に沼が煮えていた

ほしいままにした名も今は棚引く山

十字の袖その交点からよく響く枝

外科医の位置を靴に均す幻視下の塵

搗く餅は自己暗示に友達めく習い

疑いの壺にみっちり生えた花

稚魚の睦みに予兆を見るか人さらい

耳にしてくれと鍛冶屋に穴持ち込む

茹で卵にお湯かけて鍋空にする

ヨーヨー戻りゆく絶交した黄色い手に

険しい煙を抉れば豚の味も聳える

破れた桃の裏にくっきりと首輪の跡

体中背骨を恥じて迂回路へ

風紋に絞まる巫女のけなげな暴挙

目に蛇溜めてコンクリートのオルガン弾く

剥製が橇引く浮き世の亜熱帯

手札を手よりも大きく広げて愛の絶望

菌類も妄りに願う異なる春

密輸船に乗る突き落とす気配とふたりで

釘を袋に詰め込んでヒッチハイクする

どじょうの芯が覚醒して田を青く打つ

五円にしおれた麦を通してパティオに持つ

通行だけが並木道に短く笑う

灰一色の鮮やかさよ嬲らないでくれ

怪力それ自身も割れつつあり雲湧く

刻まれた裾引き連れて近付く軋み

神戸ナンバー燃えむしろ内部的なコーヒー

垂直な角材を舐め回す間借り

爆弾パトカー飛び込む褐色スーツの案山子に

角笛吹く粘液と呼ばれた町で

編み上がりにメットを塞ぐ苛烈な立体

根菜縦に割る刃物は郊外から来る

唖者の描く弧に白身の蠢く調べ

水没校舎に手十本指一本の兄

栞を抜いた記憶だけ生きて結ぶ庵

灰の写真を撮るこの音階も母

坂が液体なら浴びるのか二階から

物陰から続々耳を生やすウサギ

長袖の端まで皮膚咲かせる横縞

光差す辻に石浮くメロドラマ

善のほとりに曲がる中毒者と象牙

防風林を歩くもの皆囁きつつ

ラッパを振り回して海岸でガラスを割っている

目に余白のある画家が画布に二秒を刻む

文鳥と炭素を分けて逃がしてやる

簀巻き漬けた水たまり艶めくとばかりに

鎌下げた壁に添う犬となる裸

緑だ自我は激しいシグナルその農村性

ワープゾーンは遊具だがいつしか目を縁取り

意中の牛に薄くカタログ化した死角

分かると固くなる氷に催す敬語

袴長すぎてはみ出す満ち足りた暮らしを

勾玉は常に蠢くここである

空洞も物理だ抉れば種々の書物

十字を結びたがる舌を出し切る水道

高窓から濡れた手を流れなさい水

忌み切れず暈を頂く病んだ峰

熊疲れる宇宙は縁のない穴かと

無地の看板半分溶け半分は今

老婦に入れたまま目を転がすスラム街

胸像焦げ都市ごと留守になる退廃

あらゆる不当を飲み一滴となる二階

クッキー焼く静かなお母さんの肉体

行き止まりを淫らにする見事な胎動

荘厳な腹部のパースが信徒ら呑む

完全とは蔦に夜露の溶けた姫

感染呪術に迸る雪の翼与えよ

つがいのダイナモ超俗的に東を巻く

説明なく笑うかに見え後ろの他人

少女は足の指に煙草挟み傘にされる

ヘッドライトが照らす黒い海少し温暖

割れた岩に刃物に似たハーモニカ挟む

夕方を脱いで広げるまで帰る

雑巾絞る我がことのように首を欲し

きれいなシートのあることが突如の輝くボタン

宇宙に細る廃村への私的な頷き

下垂体と通じる王朝光るために

虫煮詰めた缶詰めと声殺し合う

レコードの罅を巨大に引き摺る繭

充填しては樹皮を剥ぐ僧と僧はひとり

血を抜かれた象打ち鳴らす初日の出

文法上編めば必ず闇を刺す

ドア太りありがたく熱押し潰す

弾痕を花輪で飾る質素な店

都に遠く甘い村あり舌引き出す

必然性に基づく展開図の消毒

日付けは枷その通りだ蒸し返しに来たのか

静かな胸張り詰めていく洗濯槽

煙まっすぐ断層めく見知らぬ町を

人の滑落見る山肌に繋がれた牛

オスの剥製一体ずつ焼き落ちる橋

銅板折ると走る爪痕みたいな記憶

特売日に固形の宮を死ぬほど買う

キッチンにちょうど収まる霊長類