2010-05-21
用紙突き破り姪が後頭部に着く
回路の一部として発光する火口のカラス
鉄骨無形の序に猿の手雷鳴を突く
木陰を繰る湯気笑み疲れた老婆の口から
引き戸に引かれくすぶる櫂をしんがりに山河
憂い剥がすタイルに麦降る母船の傾き
光源を横切るイカの習いに血
堀の死角に額縁包帯吸い上げる
音に混ざる鹿の角心臓重ねる
戦前の谺連絡通路に貸す
伝説の最後の一部である大木
隔離遅れて村ごと縦に写真引き延ばす
歩くに遠い月朝露吹きゆく片道
もの凄い前屈で薄い森を綴じる
大気圏すべて裏暗くする山折り線
いつまで犬の肩に痛む里を恋しがり
鉄棒で傷が見えないまま生きる
各部屋長いシートを垂らしどこも夜道
終わった紙芝居のシーンもう刺しきれない
寺はだけて紅蓮 爵位の襞を穿つ