二乗千年

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2009-01-01から1年間の記事一覧

2009-12-30

濡れた証拠に噛むピーナツが岸を埋める 前転して乗るべき船から遠ざかる 肩寄せあいシャープペンシルの芯を折る 起立して消灯ここら海と化す 耳を抜き毒牙を枕に寝るウサギ 肉眼に歯形受け継ぐ岬の家 何の比喩でもない父が降る火鉢のそば 異邦者ことしも次々…

2009-12-29

薪を牛にぶつけてきれいな三角形 まだらの一部に居を構えて霊界のサイダー 空しい脱衣に音が立ち無傷 磁場狂い鶏冠が対になる茂み 日没の模倣まず転がる首を指差す 寝ずの番に板を噛ませる火事の夢 食肉踏む足どかし肩でフタを閉める 狼型に欠ける月満ちて断…

2009-12-15

呼吸冴えて月夜に配達夫の点滅 渦から末広がりの痙攣受けロボ前進 除隊常に小数である無数の靴 カマキリに例える頃のレストラン 囮の足美しく谷から噴出している 街に朱のうねり閑静に草刈り機 まくった袖が来年の海外に着く 海の模様をした牧場に誰もいない…

2009-12-10

引戸を抱く血相で富士山になる 金粉で森が隠れる息するから 内側から庭を足すフラフープを回し 正当な実害はうねる蔦だ星 窓に映る真空とあやとりで遊ぶ 隣家の不登校児が笑う鳥を笑わない 鬱蒼と蝋が垂れて切り株を塗る 教室のBB弾に隙がない 吐く糸の寒い…

2009-11-27

さよならの透明に明日のえっと午後 路頭に伏す列の儚みから魚 慎む鐘の音より淡い蓮を研ぐ 頭身を持たぬ神なれども死なれども死 雫から触覚泣かれぬ悲しさよ 小屋壊してウサギがいた頃のようにする 浅い意識に誰かの足首あり円環 すっぽり排水溝に嵌るイーと…

2009-11-19

罠遠い冬の間の降霊術 爪を洗う日も滞りなく銀河 放課後に淡いガム噛む歩兵いそう 燃える海の場所何度も悲鳴で聞き取れない 冷たい縄を伝う青いペンキ昔は虎 ガラスに透けるわたしであってもガラスを思う 火葬場に風入れて踊らすトイレットペーパー 奥行きへ…

2009-11-06

憎くて墨を吐くための晴れ着の墨袋 妻のにじむかけ声が船から聞こえる 空長方形ならかぶれ柱まで囮 泥にへこむ虹を書いて人々さかさま ポタージュの彼岸へ横に五重塔 釈然と滝を切る湖面のプロペラ 地球儀は回る最低でも巨木 カルシウム欠如して笑うみずがか…

2009-10-25

屋根のある箱に土足で住む火だるま 移り香に双子の瑞々しい性器 鏡のじぶんをほぐして百のスプーンにする 暗闇に梅干し投げこっちも暗くしろ 見渡す限りの緑を収めるテープレコーダー 腹痛を中継してイスラムのラジオ 雨あがるひとかどうかもわからぬうちに …

2009-10-16

コーヒーカップの取っ手を傀儡汚れて通る くるぶしを他人の血色から抜き取る 鐘の破片に待ち合わせる特使等も余韻 紺色のテトラポットに沈む船 その家を焦がす炎に鋭い点呼 眼科の裏で今日見た夢から磁石を取る 仇を取り花を植え地を這い身ごもる 斧持って肌…

2009-10-04

脳裏から脳裏へ靡く眩しい泥 通り過ぎた電車を頼りにシチュー煮る 屋上に揃った靴と静電気 獣の毛と連なる土この見晴らしに住む 水底の村へ百年分の髪 折り鶴を解けば痛切なる宇宙 人家に殖えた蕎麦そこへ訪ね来たる外套 蛙になり浜を照らす雑念は釜 カフェ…

2009-09-28

頬掠める九死の賽は十面体 室温をならす裂かれた長い虎 鉤爪をくぐり近親者は通夜へ 宙づりの女将と宇宙の話をする 泡がビリヤード台に鎮座する当日 力尽きた兵士は実に春だった グラス置く肘の角度に暮れる山 波風の真っ只中に彫刻刀 泥四角くはにかむ農道…

2009-09-07

若い老人燃えないゴミの前でふやける 靴べらの狂いを餅で象る熱 観客等が笑い譲る舞台の椅子一脚 ほつれてばらけるキリトリ線を司祭選ぶ ギリシャの柱と柱の間に凭れて消える 捨て猫の傘の部分が欠けている 泣く子に近い枝は既に唾液で濡れている オリーブオ…

2009-08-18

蜘蛛から見た愛もある茶筒を開けよ 敬い腐る蟻噛み締めて忘れる肉 箱欠けた部分も箱午前の黒い砂 液体の店主は秘密に商店街 裸体に勾配あり水たまりが波打ってる 古城鳴き仮死のぬくさを内から積む 溜息と鳩の血で弾くピアニスト 鉄を撫でる涙目のすぐ下まで…

2009-08-11

お手玉の手首が火に照らされ太鼓 霧より出て霧に戻るワイヤーの痕です 蝶崖まで飛び重力と密約する うろ覚えの紙袋に窓震わす風 倒れる何もないところへ額装 路上に毬弾ませ庭の虫食い算 力士の硬直唇から始まり消灯 屋上に雹を案内する看板 寄り添うふりし…

2009-07-14

毛先に玉となる酒を羊は駆け出す 物憂げに水を平らに昼は過ぎ 海溝へ人魚静かな陸を蹴り 橋と川辺で包む紙片は薄緑 老いて包丁の峰を歩きまだ暖かい柄へ 三叉路に留守番の者が立っている 蟹座の女は口まわりの血を隠しきれない 土曜日にマの字を入れる診察時…

2009-07-08

俯き漕ぐ舟の積み荷はぬるい羽根 空の月に浮ぶ空へ痩せたソプラノ歌手 つかまり立ちに砂打つ片目は蛍光灯 斎場へ墨汁流す冷えた股 主観捨て紙の震えを嗅ぐ神主 屋上から滝と呼ばれるまで飛び降り 地割れに冷たい生命線添え肉体はパン 実在する嵐を窓から首で…

2009-06-26

枝分かれする階段つまずくなりカーテン 別の森の同じ沼地に降る偽札 星空嗅ぐ足場が連鎖して透明 青だ横断歩道は円錐とねじれる 本押して応答なくば辞書も引く 風に乗る閉じた傘でも逆上がり 突き刺さる鶴の蛹であった釘 亀の尾が省かれて宵のうちは雨 実情…

2009-06-25

空室の対角線が錆びている 台伴う生誕の目を取る細波 開いた本の下がガラ空きで赤い爪先 水を汲もうとしたジャガイモの末尾五桁 絵をちぎり輪にするするする生娘来る 坂の切れ目に老婦上半身フフと揺らし 室内へ穿たれた光ごと幹 虎だった円盤の歯形から下山…

2009-06-09

今日初めて雲を知り割る子を見知らぬ 桶を攫う手刀は空に斬りかかる 休場して貫く無言に麦添える せがまれてもこればっかりは夏の樹木 欠伸のワニから逸れて山道芯ばかりのひと 蝋溶けてと発する峰の遠くに磁界 喉元を歩かれ砂とグルになる 屈む己の人骨に袖…

2009-05-25

目を閉じれば左岸に卒倒するゴーレム 眼鏡折り馴染みの虎を別に飼う 石を孕み十三番目の地層で寝る 胸のボタン電池高鳴るもう用済み 逆光花ごと浴びて家財へぶれる笑み 木棺を削ぐ泥濘に春きたる 喪のなりで覆う顔から砂階段 螺旋を書けば書くほどに孔雀を離…

2009-05-06

鳥居囲む舟二艘から米の嵐 屋根割れて一本の麺湯に漂う 川沈む肥沃な顔面して弔う 隣人に熱奪われ壁の円い痕 囲碁極まり同じ祖父が多数浮く庭 柱を浴びている老婦限りなく息吸う 定規と道が交差するに足りぬ失踪 次に会う師のいた場所にかんなくず 畳まれつ…

2009-05-04

病中の他人の胸に指輪置く 雪降って毛皮の継ぎ目が分からなくなる 惨い部屋に無が真実と語る額 笑み残るとする湾曲塗りたくられ極彩 模型の塗装に照らされてある老人街 指の中にある骨の刻印を読む 燃料から枝伸ばす液体の鳥 火のように薪を投げ入れられ巨体…

2009-04-15

窓から鶴と出す首が平行に白い 割れた海に喉貸し数え唄歌う 寝間着に打たれた底板の釘で触る海 桃から引きずり出される自分が見え多重草 壁の綺麗な穴から角出るまでテレビ 袖で縛られた柱の風上から近付く 水門から見える南に群がる鳥 シャボン玉に隠れても…

2009-04-14

突然の恋が奇数を兼ねている 緑の米に浸かり無口を貫くまで 犬と会う砂利よけねばならぬ広がり 対辺の暗さに町の呉服店 刃渡りにテトラポットと揃いの靴 陣痛の男がビルに塗る卵黄 濡れた紙テープは舌若き未婚の蛙 物置を潰す裏庭自身の息 ぶり返す背中を矢…

2009-04-13

草に指をかける銃口は夜全体 流れ星蝋煮ることも正しくあれ 水筒に長い鳥の尾入れ花の日 もといた宇宙を囲むチョークであった粉 いくつかの苗は破裂し成層圏 布の端に蛇住まわせてワープする 血脈に谷を当て置き手紙する 轢かれたマフラー行きも見た首携えて…

2009-03-25

肋骨のあたりに箸を立てて寝る 裂けた鍵であれ空で光を見てきたのだ 林ぐつぐつ煮え始め尽きぬ噂話 木星から霧吹き出し肉眼役立つ (ここから2009年) 中州凍てつく音凍てつく度鳥の形 暮れ返す雲の翳りに坊の膣 花束を吹き消す肺膨らみ透明 女の列一旦は囲…

2009-03-24

エジプトの風鉛筆で鰓と書く 懐の穴を出る手にぬくい石 光トロリと星から溢れ出シーソー傾く 私物の針溜まる溝へ預言書引き裂く 別れの車輪が突き出す化石の御者割って 氷柱刺す枝擁して紙破く筆圧 後退った場所の透明に刻む目盛り 廃棄される万力の夜は宝石…

2009-03-12

うたた寝の顔にかぶせる本身体が透けてゆく 断面を読み取るつてに黒い足 草浴びて頬を打つ軽トラの荷台 誰もいない鏡の中の薄い紙 関わるための屈伸後頭部には鈴 月の陰になる槍月の方へ伸びる 木の葉潤みだす森の奥から凝視 耳は二つ目の口土壌を転げ回る …

2009-03-06

カタリと雪平大嵐も煮るつもりなのか 穴ぐらから砂塵へうねる腕の跡 水を吸う滝よわたしも二枚舌 着ぐるみを脱ぐ風船ら手紙揺らし 微温い海が濡れている小さな町の鐘 灰を積む花壇を少しでも高く 呼吸で呼ぶ遠く悲しい貨物列車 芋蔓に錆びた鉄絡むわたしだ …

2009-02-19

ペンキ尽きたバケツ下げコンロの火見る 回廊立ち止まる未亡人の皮膚の延長 生後軽やかなニードルになり鳥の飛ぶ場所 苦心の内訳書く紙が縦枠で墓所の風 部屋に積もる雪を蒟蒻履いて踏む フィルムケースに入れられても泳ぐ水母の滓 風向きに背を向け生家包み…