二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2023-04-26

動くな動くなよと仏像も呼びかけてくる

温床にハッチを開く寮母の殻

脳の横に道を作る会いたいのかな

喪のパルスあるいは靄どちらにしろ降る

置かれた寿司を包む舌少し滑らせ歩く

受粉して折れる茎に惜しみなく池

畳毟る田植えの手を清めるように

己の乳様突起に触れ車庫まで歩く

老婆の書かれた垂れ幕射る飽和と呼ぶべき

パイに疼く細胞片の事象まっすぐ

中空を切り取るピストル冷えて鏡

島から先に降ろさなかったから無人

校舎の眺めが良い場所に前兆を置く

内側から皮膚押して包丁に近付く

葱畑に生えたものすべてがアダム

閉じた傘を真横に断つ雨不登校

青く透明な蟹密輸する低い合図

空飛ぶ円盤釘付けにL型の改行

果てよと猫が雨だった時計の裏から

寂寞の痣にリンクを張る涙

無闇に木を傷付ける露出した山奥

馬に貸した肉に誰かサボテン植えた

袖まみれの劇は一過性の人体

筒の束を巻き戻せば溜め池がある

テレビの前漂う室温だけが光

ゼリー質のみ滑り落ち桶の衰弱

昼の豚を焼けば夜の豚退路を断つ

電源抜いて壁に家具を塗り籠める持続

水没してコップを汲む日記の終わり

神社が個体に戻るまでの穏やかな町

信号に青く車中泊する地形

実を割って撫でる中身の遅い街

家という尖った型に風流し込む

磯の形を贖いと見る未到達

迂回して宿る魔性に酸の雨

満場一致の呻きで撫で釜茹での刑

境地にストーブ抱く暖かい葉書も焼こう

手裏剣ピピと飛び汚染してくる逃げろタクシーで

コップにわずかな牛乳残し床下膨らむ

前後左右は垂直にずり上がる泥

道も眠れば川か頭から櫓を引き抜く

アを百書く空中に円柱状に

扇の形に引きずり出す舌こちらと手を打ち

星座の最暗部に強盗する定めの子

旅行という刑を目立たす背景色

天井を継いで倉庫に吊る心臓

この夜明けは恨めしくとても長いジーンズ

万有視力を閉じ縞から這い出るひとたち

蒸発した人形匂う里の春

痙攣を浴びた米に時間の概念

浴槽に固形の目を泳がせている

補助輪異様に回る崩れた露店の下

朗々と吸われてミスリル銀採掘

谷底の味に第三者化する失恋

歯を舐めつつ鎖でしごく墓の整列

航空ですねと君は眉間に燃料垂らして

真っ青な泥がこんもり待つ内科

望みはひとつプレス機に森の動物たち

首をもいでいかない雲に黒さはいらない

飾る気のない鉄が穴から次々出てくる

図中の国は黄色に犬の舌を絞れば

密度が移る夢の試しに石は浮き

陸は不要とある石碑抜き担ぎ回る

井戸それ自身内側に傷を付ける旅行

脈拍に応募券貼る祭りの後

蟻を捏ねて面にする長さは問わない

四方が襖記憶飛ぶほど植樹され

段階早く埋葬はピーナッツの香り

星に似て刺身で潤う乾いた眼

まばゆいばかりに口を割らんか不寝番

枕元に調理済みの肉めくる係

頓挫する壁を階段で押すプラン

古びた鏡に手を打てば数珠繋ぎの猿

袖のみ空間に浮くとき誰を弔う

生を損なう定型に符合するマンション

魚焼く緑に焦げた山の前

巨人を飼う橋軋み滴る洗浄液

炉の導入計画焼きやすく紙へ

風鈴に風を喰わせる痩せた腕

鳥の胴にシチューを入れるためのファスナー

粘る主観を取り出す戦のまま年越し

ホテルに合うフタがひらりとかわす葡萄

姿形はいずれ書くぼくの子孫が

おままごとの火事長引く微動だにせず

泡立つ白馬に乗り銀河を水増しせよ騎士

ちぎれた根を慕う花粉あかるく絶滅

油を弾く電柱は昼を神より信じる

春の胃に潜る塹壕牙光らせ

蔦とモラルにカーテン引くありふれた避暑

腐食は水色で塗るぼく以外の合意で

屈曲がピアノを侵す肺呼吸

埋めた魚で花壇がぬるい昨夜へ飛ぶ

掴んで食べられたい徘徊だからやめない

塀を陸から剥がす靴べらどう罵る

ワニをしまう部屋垂直方向に長い

樹皮の裏に差し込むゲージ既に減り

すり抜けていくとき音か凡ひとつ

食べ頃の蝉より機械化進む義眼

無限に後ずさりできる廊下は寂しさかも

入れ子を集いと呼ぶ正しい戸のない個体