2010-12-07
鯱入れた火事のいれものから悲鳴
山奥まるで膨らむ双眸またひとり
プレハブ建つ欠けた錠菓が喜ばれ
庭とは一種の倦怠足りてしまう煉瓦
詐欺はたらく老躯に震度ゼロの話
薄暗い鳥の軌跡打ち消す位相
橋落ちて水より人が先に柱
泥の産毛受光してこじれる水深
馬切り抜いた白紙に倒れ込む本棚
沈黙は夜霧を運ぶ青い棘
天使裂く鉤爪番人には耳鳴り
鳥ぱんと割れてラジオのアーヴァーズ
午後九時市民に開く苦しい胸のあたり
耳状のフカヒレにシールしてピアス
喪という喪が明け猫という餌の主
裏庭荒れ前世のシャツが迷い込む
音するほど大骨折百の南瓜の中
人魚かくれる世界は面だと言い残し
新大陸見失う波間に光線今も
妄りに虚空在り離れて離れてゆく