二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2021-11-03

蝶を二画でなぞれば×進めなくなる

蛍光するかろくろ首よネビュラの如く

電極滅多刺しの畜生から戯曲『椿姫』

霧の間際を既に失う占星術

吊るされた子鹿の影に渦巻く無垢

バラ肉いつ円錐に似ていくつも去ったか

驚くべき高原に滑りこむヘラ

血を差し置いて巡るものに切符を預ける

寺領の熱わだかまるフィルムの残りに

膨れて黒ずむ袋に触手を書き足しておく

折り紙でサイレン作る古い家

裏返すと派手な影が染み出てくる叔母

味撒き散らしなお消えず野鳥園目指す

思春期の火葬に耐える架空の牙

自我まぶしてよく揉むタオルとその魂

町の何がゆるやかかわかるまで這いずる

赤い実体手近な塩を罪に問う

猿を生きたまま許したときから鳴るブザー

鏡捨てて誰というカテゴリーに戻す

甘い星降るふかふかの伏した背中に

苦しみがわかるジュースでねばつく喉

住めば都の施設に所蔵されるコピー

氷湖の台飛び越しアステロイドベルトへ

多面体に馬閉じ込め正式に馬車

遅れて待つ水槽を持つ客の光

無効な手続きする拳から立ち上る手首

瓶から出された牛乳憎まれつつ滝壺へ

顔失う地下道から湿ったネクタイ

純粋な馬上に入れ子の馬上がある

手首の静脈より静かな海固形のまま見る

牛馬相互に肉を持ちただ傾く人間

布ばかり露呈して水洗いする

峰引き抜く朱を欠く柄の言語満たし

空のメディアが瞳に揺れて功労者

品目という字塗り潰し窓を仰ぐ

桶の底を刳り貫けば灯すべき針山

犬の解剖臭で通じる支部支部

磁力と照射の狭間に誤配の銀欠けゆく

秋の木に木こりを縛る夜を覗く

月は光らず棘を持つ柱逃げても逃げても

空き家に霊を投げ込む一人称は僕

鏡にかかとだけ映す凶暴だから

口を縛り母子は息代わる代わる吐く

鴨の曲線美を削ぐ味蕾の虚ろな信号

非道の限りとはどこか月蝕始まる

仙境に霞群がる肉を求め

沼を汲みチューバに注ぐ家畜として

撲滅記録は二枚貼りあわせ糊の垂れる

クリームソーダの側面溶けた巡礼者

寸劇を並行に裂く異形の滝

ジューシーにS字の歯形が付く食パン

パステルカラーの地滑りと父取り替える

深海まで光を吸う紐状の疼き

知識が減り用紙の縦を決めかねる

川にも鶴にも超が付くただズレていく

音の失せた遠浅をポリタンクに詰める

あっけなく手押し車は手を縛られ

竹藪に胸を異境として渡す

きれいに押す表面を覆い合う紙

ツルハシで石油を打つ昼誰も来ない

持ち手として絵画から垂れてくる液体

一声の宵に鹿射る非凡な才

予知の中盗聴器を紙幣で買う客

なぜ温かい標識を首に巻いているのか

正座する音に資材を混ぜねば朝

海の向こうに赤いシャベルの刺激をください

とにかく生理的にこの町をパン戦ぐほど

肉厚な霊廟齧る奴隷の鰐

生育毎刻まれた目盛り記憶より深く

暗号が浮かぶ人体より軽く

数値の上ではここに異人がいて笑う

生産ラインを先に老人が出て海へ

昨夜の形状戻せず空を切る喝采

鍵穴に立つ検視官つまり倍

倒れた花瓶の前大自然になりつつある

前夜にも指紋を拭き取られたミシン

この落下を愚弄と呼べ浜を掘るグライダー

模様極度に拡大して文明滅ぼす

射精の記憶だけ焼かれて無邪気な牛たち

電気を体に帯びて村に持ち込む神父

裏に解体現場を持つ人格が多重

身なりがへばりつく路地は我々を失う

路上にスリッパ並べて多量の昼を浴びる

手札からダイヤを抜け絶対殺してやる

平等にトーと油が流れる横笛

銃声のふくらみつつ山と呼ばれる

範疇を石に譲る甘口のタレ

窓溶け落ちた先に馬凹む中世から

掟破りに破り返す患者のパジャマ

砂漠に沈むと向こうに出る円盤として

頭注から滾る雨する食人花

円尽くす路上の天命はしごかれ

競技的春の薄笑み掬い切れず

森ぐれて吐くやや鮮やかな墳墓

マントから分離され不実な唾液をなぞる

重くのしかかる羽根という麗しい乖離

代わる代わる笛吹き熊の中身をつづらへ

本には過ぎた奥行きにいつまでも雨音

着弾は干からびた夢かビオトープ

途切れた歌に金切り声足す公家の娘