お手玉の手首が火に照らされ太鼓
霧より出て霧に戻るワイヤーの痕です
蝶崖まで飛び重力と密約する
うろ覚えの紙袋に窓震わす風
倒れる何もないところへ額装
路上に毬弾ませ庭の虫食い算
力士の硬直唇から始まり消灯
屋上に雹を案内する看板
寄り添うふりして垂れ下がる足格子状
乱していいとは一言も風はこぶ棺
打ち上げられ矢印みたいに故郷指す
犬とはぐれている大きな柱が長針
寝室の内圧に棲む淡い天体
森尖る先端で焚く火が哀れ
どこに呻く鐘でありたい刺を抜く
傘をなぞる鉛筆より濡れたい窓辺
書物過ぎて風あう街の独り櫓
目印は鳥だと知る足跡切り刻まれ
春の強い捺印よけて裾伸ばす
行軍に蔦持ち上げて砂糖まぶす