2009-09-28
頬掠める九死の賽は十面体
室温をならす裂かれた長い虎
鉤爪をくぐり近親者は通夜へ
宙づりの女将と宇宙の話をする
泡がビリヤード台に鎮座する当日
力尽きた兵士は実に春だった
グラス置く肘の角度に暮れる山
波風の真っ只中に彫刻刀
泥四角くはにかむ農道鍔の陰
雲薄く怒濤に焦れているキリン
村に車輪付けて林に突っ込み光線
ベランダごと鱗粉握る鳥の変容
図を食う二名の等しさへ謎めく正門
胴が揃うモンタージュから春の煙
笑う日を塗るカレンダーはみ出すほど真っ黒
固い蛇を電気のように通す鉄
体良くかさむ夜が右肩錨を投げよ
仮の明日の日当りへ遺品をずらす
歯茎の中へ無数の淡い鳩を放す
似たばかりに枯れていく花 塔がひょろり