屋根のある箱に土足で住む火だるま
移り香に双子の瑞々しい性器
鏡のじぶんをほぐして百のスプーンにする
暗闇に梅干し投げこっちも暗くしろ
見渡す限りの緑を収めるテープレコーダー
腹痛を中継してイスラムのラジオ
雨あがるひとかどうかもわからぬうちに
炸薬で粉になる渚をまとう
電気的な獣姦だ妻の刹那の跳躍
植物の茎の目盛りに億が付く
墓碑きれいね斜面から腕だけが見え
くノ一の首が飛ぶぼくだけの月蝕
そうめんが垂れ下がる奈落に底などあるのか
肋骨を空けて宿から見えない空
鉄琴から離れてひとり鍋をかぶる
一トンのしじまを家宝の箱に詰める
泣いて剥ける母で折り返すランナーでないもの
霞うらむ町の片隅につけ髭置く
たとえクジャクを焼いても開かないカーテン
梢に砂漠が刺さっているどちらも歩く