2009-07-14
毛先に玉となる酒を羊は駆け出す
物憂げに水を平らに昼は過ぎ
海溝へ人魚静かな陸を蹴り
橋と川辺で包む紙片は薄緑
老いて包丁の峰を歩きまだ暖かい柄へ
三叉路に留守番の者が立っている
蟹座の女は口まわりの血を隠しきれない
土曜日にマの字を入れる診察時間
屑なりに鮮やかで君等は誰だ
カンボジアにいた頃の数え年で蟻の図
棋士の指す先手に幹を見て溺れる
甘い筏舐めて遠ざけ大砲鳴る
頭が割れて頭痛と会う堤防は春
屈折した視界に咀嚼の一部始終
土だ盛ろう室内へわたしの呼吸へ
ローマの橋で奥ゆかしく小麦粉を撒く
山ほどもある身なりのよい老人から棘
波を浴びて鳥の足首と今がずれる
砂粒に例えてから墓まで記憶がない
沖合まで他人の影で暮らす列