ペンキ尽きたバケツ下げコンロの火見る
回廊立ち止まる未亡人の皮膚の延長
生後軽やかなニードルになり鳥の飛ぶ場所
苦心の内訳書く紙が縦枠で墓所の風
部屋に積もる雪を蒟蒻履いて踏む
フィルムケースに入れられても泳ぐ水母の滓
風向きに背を向け生家包み研ぐ刃
窓から水を経て見る日溜まり異様に輝く
針金皆手前で溶ける工場から撮る
暗躍の場に仮の姿の爪楊枝
岩へ崖から舌を伸ばすかわすはずのなかった岩へ
駅で疼く背骨 死であるように未知数
傾く炎の輪どれかひとつは冠するため
プリズムから血の気が引く変わりに膨らむパン
粉詰めて吊れば吹かれて鳴く小袋
断絶とは放電を赦す末端とテレビ
銅鑼に打たれ男が剥けていく通路
膝掛けから壁づたいに屋敷を出ようとした
覚めぎわの夢と鉄の先端爪先に
曳航されたいネジで取り付けられた海から