2009-07-08
俯き漕ぐ舟の積み荷はぬるい羽根
空の月に浮ぶ空へ痩せたソプラノ歌手
つかまり立ちに砂打つ片目は蛍光灯
斎場へ墨汁流す冷えた股
主観捨て紙の震えを嗅ぐ神主
屋上から滝と呼ばれるまで飛び降り
地割れに冷たい生命線添え肉体はパン
実在する嵐を窓から首で指す
見失う遊び相手の靴に写真
腹に代わり柿が空いて互いにコの字
遺骨をあるアメリカに置く他者の妻
我を裂きひだまりに頬杖を貸す
花札崩れて停留所は鳥の楽園
地鳴りして誰かの息が現れる
苔の果てに石クスリと偶然を呪う
ケーブル束に手が生え足が生え犬の黒さ
橋をくるむ嘴に雲の影の意味
末代の書院造りに雉がいる
気球に乗り魚をかく鉛筆の往復
繰り上げた十の位に雪が降る