二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2020-04-06

固く結ばれた握手置き遊ぶ南の島

国土から抜けた歯を慈しむ足

歯車の手前の巨大としてぼくいらない

出口に似て夕日の色に染まらぬ書架

異論たるべき椅子の行列を動かすのみ

橋の裏に従いたい外道と呼ばれても

南の果てシャツ裏返しに鞠つく老人

栓抜けば耳でなくなる噴水前

鯨睦まじく深まる淵であらんことを願う

庁舎混む雨を鎖が演じる中

廃墟に廃人住み毛が生え逞しく街が

行き止まりで立ち止まる身の腐敗進む

印刷所にタコ突っ込みタイヤ痕八つ

長く太い笛吹く明るさしかない樹海

具のないサンドイッチを保持するぼくの空虚

雑な会を開いていく神経の簾

辞書から赤く意味湧く口の中よりも

飲まないひとがしゃべる薬を瓶から見る

踏み潰して種蒔く倫理を絞め上げつつ

灯火をうなじに映す鑑賞会

草を知性の影に縫う周波数の地鳴り

栞挟む次の奇数まであと百十

男クロールで川を渡る見る見る裸にする

町会ごとに魚を焼いて低地の春

密室内部全身で撫でる手にエコバッグ

脅迫機の余生がジャングルジムである

各々散る目的地の世俗の食器

義眼ピカピカ強盗から外れて宇宙へ

息象る気温の夢は国とされ

鉛筆マーク押しつぶす指が床下から

網膜が雪降る遠くに剥がれていく

幽霊ごっこの結末に星ひとつ飲む

疎外の音と意味を断つ文字という分類

熱波に狂ったピストンから迸る曙光

螺旋の溝は爪先に地獄は地底に

廃油を積むキリスト教徒の軽自動車

蛇口をドバドバ出る標識解熱は望めず

頑なに水没教会円錐状

後ろ手に拙さ残る白夜の椀

髪剃って爪切りへの愛示す女

粉の隠れ里に天候はいつも器物

お菓子を包んだ皮膚に血管が浮き出る趣向

ビル切り崩してみれば兜の緒だらけの怪

仏壇からムカデの愛が村に散る

葉物野菜の吹雪を自在に孤立する

水槽に筋肉泳ぐドア開けっ放し

魚肉を感触のまままだ練る宿直室で

熱を帯びたケーブルだ体中床下

ドブと思うことは容易い首都高速

な行を知る第七関節ぼくのかわりに

空中庭園埋めてなお余る蟹が降る

ギターの叙情を石畳にぬいぐるみ剥いている

春暁からくも豚の血としてあり豚滑らす

少年膜を洗う川ならば渡らねば

冷えた泡を吐く大真面目に大目玉に

線香花火の下峠が小さく小さくなる

墳墓の底黒い曜日に生米貼る

真鍮のコウモリ横丁激しく雨

縊る猿から鏡二枚分の嗚咽

石版やおら肉厚に裏山の裏で

潔白靡くだけ靡かせシーソーから除名

断面を見せて立つ馬仮に娶る

炎に熱溜めておく次々と身を投げ

計測塔十階円盤室に邪教

耳たぶ揺らす日没を知らせる警報

鉱山に海より広い解答欄

砂場に砂糖をかけて食った痕ここも銀河だ

意思あり毛を生やす女撫でると喜ぶ

橋を渡るわたし弓なりにゼリー吐く

いずれ消える波紋の半径残す棘

継母の可食部位振りまく猛牛

明かりが細く群れる記憶にない船出

捧げる身の不在を花滴らす畳

稲妻寄せ大瞳孔に沐浴する

書に来る昼の真新しさよわたしは彷徨う

億の因果吐く仮小屋に煙充満

虎が何か食う番組と家督を継ぐ

公園の形を信じている小鳥

獣皮を巻かれてなお海鳴りを打ち消すミキサー

落ちてゆく谷底にも同じ西暦

受粉して猿回し光る花火のそばで

一家離散の家メキメキ肉離れする

胸が壊れて回転木馬を抱き始める

裏も表もまさしく葉一方わたしは紐

爛漫と丸窓を埋め尽くす乳房

老女とウサギお互いの断面に踊る

人々押し寄せてくる陣形は言語である

音・光・匂いを結ぶ嬰児の額

例などなく海の俗はいきなり凍る

目の奥がチカチカして無限の星空

闇に浮かぶ地球の靴へ注ぐ肉体

畑がヒリヒリする約束の縄が腐り

不時着して友擦り込む山肌には薬

憐憫の情は正しく箏を割る

剥製になった沼から破調の梅

カルテ洗う掛け算を口ずさみながら

性欲尽きてただ雲湧くケースの蝶番

横断歩道という閉じた棒グラフに水槽

磯が薄くて板チョコみたい舌が漏れそう

琥珀にある単純な奥いつも雨