二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2019-08-25

空爆の夜を浴びうねりだす麦秋

呪縛に咲く花鮮やかに予定して

肉体美の髄であるつもり泥は苦く

真意ほど離れて聳え立つ鉄骨

旅終わるぬるいタケノコの姿を見て

カナで刻む下流の鞠は生きていると

空適当に色濃く情緒を走る電報

軍用機の捩る余地からコーラス隊

シャボン玉を葉書に貼る子ら束の間燃え

止まる牛の意味ばかり引く百度の熱

骸に蔓延るイースト菌を写植とする

駐車場に星座刻む石器の座標

グミ放熱互いは互いでしかない

常緑が吐く砂を浮き輪に通す

突如鋭いドア噴く狭間会話接ぐ

知らず知らずも知る老樹と祖母一体に

蝋で固めた頁が室内楽踊ろう

宙なじる鉾に逆刃の愛ひたむき

王の蛙は香るほどに透明度を増す

他人の顔を手で覆い泣く無傷の卵

目の焦点を大切に露出部へ種蒔く

日差しは強い満面のダミーそこかしこ

時は大正、精神をやられた鳥にも巣

吸引の跡を模写しつつ襞も整え

奪い合う席きらめかせ宮の足

張り裂けそうなビル押す宇宙のあらゆる水

公共の脳裏を噛む柵あたり眠く

ガマに食われた虫ギロチンの露を啜る

激戦のそこかしこに音楽流れよ

本にきりりと引かれた眉火の粉へ没する

鍵穴に虎の毛へばりつく人家

橋脚全て失いなお凄まじく亀裂

呻きは肌一枚隔てて水色に

池は拳大乾いて絵筆を握る

宵は油に照り付けゲラゲラ飛び回る蛾

石段に弾む日傘の下の首

楽土に香る洗剤の前後が等しい

煮えた湯をそそのかす低い花時計へ

傷に代入する値で計器は狂った

朝へ川の字になり眠る生きた棒

俗悪な渦巻く粥を庭に放つ

手相に土めり込む逆立ち鳥も宿り

遠く召され石化の町のオブラート

嚥下の儀にひとりの顔面左から笑う

部位焼かれて工場の裏とみに明るく

蹂躙を背中に代える花から蜜

中枢より意思持つ帳艶極まる

推測一丁目を出ず風見鶏は回る

芒ヶ原へ弱肉はくすぐられに行く

キリキリ香る青に血をつくる柔らかな瞳

断面は鏡でしょうか好きな町

うろ覚えの狐雨樋に書かれ退屈

轟然と鮮やかな足垂れる祖先

青空トロリと翼呑み弾と化すカラス

滑らかな皮膚曰くと空白続く

エーテル介し滅びの床にトウシューズ

思惑に骨通わせる祈祷の末

期日に肌広げて街路飲み込む盾

土ごと墓逆さにきのこめく余韻

老婆現れ不確かな滝に一味削ぐ

多重に未完成な野原敷き星侮る

煤けている口から笛が巣立つ軒

受刑の器は針ただ流れていくばかり

峠のお化けが出る窓を見取り図で塞ぐ

怯えた猫の形の直方体滑る

食用の蝶に絡める甘い縄

貝洗うと塗装が剥げて大樹の中

魔界のツマミまだぬるく裸からどんどん手

黒い車社会ドッと左に日没

葉巻吸う唇の骨を足りていく

性器滾らせ持つ鳥固まる洲を純白に

とても良い朝のまま凍りつく画面

族長の皮めくる大移動の揺れ

前転頼もしくきれいな心のまま去る

筆舐めて湿りを藁半紙に移す

殻が訛ると娘になる許されない土地

真鍮の鳩に細さが全部吊る

落下の憂き目に黒塗り看板メキと精通

豊作を沈黙で祝うヘドロ画家

ヨーヨーの先密室は散歩され

城下に春云々と略し幹横たわる

人語捨ていたちごっこの未明へ葬る

美化して光る酒乱の線を残し迷路

仕組みに属せない麺の引率受け高嶺へ

データに濡れてただ成立を目指す魂

模型の咎ひらひら組む右脳左脳の間

拳大の握られず湿度計ねじ込む

無限増殖する熱スピンし大仏殿

禁止の論調雨漏りする軽石の土間に

開く呪文の口に腕白坊主を接続

散歩道は刻まれたネギの対偶を取る

我ら日常の鋼鉄となり非常ベル

飛び散る刃物に桃偶然切られて就寝

木造中二階イジェクト並行世界へ

遠くからの手紙封を切らず屍術にかける

一本背負いの腕に筒通し見えなくする

旅路は腫れ上がる象の皮膚どこまでも一枚

枯渇した温もりが痛い三日三晩

天意などなく潰れた鞠からアルコール

月の都に辞典ちぐはぐに送られてくる