二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2020-02-04

触診の甘みに許す骨の歪み

血走る石と我が家等しく皿を砕く

大陸ひとつ覆う影円く言語の偉大な死

あやとりから家こぼれゆく昼の居間

胃の根底巻き上げて飛ぶ蝶過去形

神も仏も軸一心に吸うほどあり

叫びを見せてくれた鯨ジュースにして飲む

光る青信号の中しとどに残虐

割れ目ならば必ず歯がある脳裏の月

目薬サルの背に差し滴るとき木登り

海峡の歌から石が飛んでくる

食料の底練り上げて柱にする

無線機に伏せる獣姦の形の皿

淑女が淑女を提げ樹海にタービンと埋める

似た者同士の終焉今思えば器楽

過去に戻り畑に列なすウサギの耳

男の紳士性光り長椅子から絵画嫌う

崖に埋め込まれたからトランプ裁断しすぎる

ペンの影も時計からねじれて来る夢

悪童の道連れに泡立つ沼地

ビー玉噛むとギザギザが蟻たちを憎む

おくやみに吹かれて長いくちびるが垂れてきた

座布団敷く座礁領域に不明の笛

天悴む奴らに甘い汁を吸わせろ

柑橘類の白い爆弾性から滝

ネズミが真夏日のポンプを主語ほど孕む

魚の中で風鈴となる獲物たち

布の端に少年置きおかえりと言う

低い切手の裏を舐めて雷は届く

着替えの代わりに蛇と狐の切り絵ばかり

土が異性であり生き埋めは成立せず

培養液でゆすぎ水神を愛する口

成仏の円形をして山に冬

蝿しんしんと降るこころに見えなくもない

巡査が服を脱ぐと実物が濡れていた

生首みたいな聖剣を阿片窟から抜く

雨なら雨で良かったのに秩序は照らした

致死量の枯れ葉吸い込むコクピット

誰もどこにも行きたくない車を拾う白紙

紙片連綿と爛れ月濁る腸の旅

宇宙まで山羊の匂いがするメモ帳

呼ばれた気が常にして種引きずり出す

山鳴りとして太い首を折る恋人

ノコギリしゃぶる家の悲しみは多重にくゆらせ

童話メチャクチャに縫うミシンを死刑で止める

クレーターに信号機みんな落ちてこい

袋詰めの不敵なピクニックを催す

広がりゆく刀という字が不安なまま

沼絡む毛を辿れば複数の犬

痙攣する死者をよそに溝から翼

懐中電灯ワッと手を離れ部品の銀河へ

幹を据えた暮らしに黄昏ばかり散らす

魚引き裂く道理も繰り返す音ではないか

幽霊橋にタコトボトボと足余らせ

奥底は多にして空虚な外宇宙

脛の皮膚たるみ夜明けを待ち受ける

萼を握る手に住む窓もあることだし

動物の祖先は空洞呼吸する

輪ゴム浮かす表面薄く傷だらけ

波書かれて磨り減るラジオに明るい銀河

旅人食べられつつ毛布と不死身のおしゃべり

その身で滝を刺すべく祈る衣服の体温

万民降りて宇宙船とただ戦ぐばかり

悲鳴は廊下に準ずるもの長くて真っ直ぐで

空き地に花が咲いてなお空く視床下部

受精のたび雲を見上げる蓋の命

火の玉憩う輪ゴムとマッチ棒の十字架

接骨院の出窓に茎が折れている

油圧の騒ぎ確か今日ぼくは結社を抜ける

歯軋り立ち込める塚に純金の顎

サソリを半分こにする柱の内と外で

匿名の脚立で嵐を点呼する

消灯の連鎖に肥えるばかりの蛹

王宮少し透けてくれる十字路の裏に

わたしらしくシチュー流れこむマンホール

解剖されたゴリラのまだ生きている眼差し

音節の丸みを帯びた隠し階段

異常な四肢で割る鏡の内とはどこか

一夜にしてすべての飾りは膨らむ定め

天をまたぐ気がして靴を割いている

なぜ清らかな夢を見て泣く暇も告げずに

帯を汚す風光明媚という爆弾

麺を吸う口数奇数の夫婦にされ

柱に旗のように扉取り付けられ室内

自宅を矢で飛び越し向こう・ここ・中にわたし

緑の太陽点々と精神の箍を打つ

犬の失踪いつからか花は名前で呼ばれた

谷ほじくり歪なメッシュの鷹を吐く

遠近法を追う側頭へ紙吹雪

午後の明るい髭が垂れる重力もある

通路も手袋をして湖上に正しく立つ

区切られて服干す色鮮やかな他人

最長の語で刺すべき局員が来たぞ

胴次々打ち上げられ欠番に響く

車輪が付く否定の意味満載の泉

山の今は筆先に染み笑顔のまま

ミンチを売る殴打で寝かせた草の向こう

つがいの本棚から滲み出る突起も人体

ゆっくり押し倒す木の根に記憶の靄

断続的に死んでいく信号を待つ