二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2020-11-07

等分された猿も生きる漬け物の味に

中央全部が噴き上げられ雨霰と覗く

自他ともに花たりえる辞書漂白し

動物園に火を飼う我等を喚ぶか異界

歩道橋が崩れて上下のぼく合体

祭り囃子が遅れてくるヌメヌメと飲み込み

鞠が舐める爪先から果てしなく沼

身近な甘い汁愛しい客次々踏まれ

月報を網が冷たく待っている

ヒトとともにある杖ヒト絶滅後育つ

最後の金粉今飛び立ち憩いを失う

部屋が平面で破れているそこから夢だから

袋を雨具にする首へ濁点の嵐

超常にカルマ蔓延る椅子の飢え

囮は県境でレモンを剥く連絡として

映像が砕けている爆笑は止まず

泣く女を絡めとるクラゲ空からはヒトデ

冷蔵庫を閉じれば闇開けば脈打つ

棒読みの助けてから棒抜いて立てる

公害の川色付く妹の写真

日として海を塗る歯車の錆びゆく夜

催眠術で塔が見えるこじ開ければ息

裏山の土を容態にずらす気象

適量の塩で隙間なく家屋とぼく

夕方色の野菜は魂かもしれない

愛しい束縛ありがとうの絵を書く園児

春へ戻る金属気化中止の割り符

銀河旅団は濡れた襞を膨らませ進む

油性で足す土手の白く微かな不安

すべてが意図された図から円形滅ぼす

胸ポケット裏返しビル風めく童謡

塩捨て場にポリタンク甘く滞る

野原が燃えるわたしは無事という逆説

地割れから邦楽戦ぐ力もち

柱時計から下が地底オカリナ吹く

裸見せる室内の闇を生む鏡

生まれて初めて見た足元に漲る亀

林が彷徨うのだガラス化した白衣の中

薬光る一人称に近付くため

壁が冷たいと言うまでに時間差のカプセル

柵自体と柵越しの分断も点呼

古紙に渦中は重すぎる白という純潔

痣に深く着色料爆発の響き

殺意の他どんなものもやさしい人毛

走法敷く住宅地は穏やかな幕

存じ切りモザイク斜めに切るピクニック

予報にない雨天でなければない公園

音波さながら梢に枯れたという実感

瑞々しい眉間のみあり冷気を吐く

市外局番の数だけ曲がる壺は枕

石化を解かれた砂利が舞うプラモデルの川

死角に綯う遠縁豊かに京花火

霊殴る自在の穴に古墳抜き

あるべき目のない純白の塊が男性

美しさにメビウスの輪で象を縛る

草履齧る若者たちの脛から下

バイクの絵を洗う見覚えの薄い二階

竹馬の命をさらう仮の磯

虹の書き置き破裂してトーストは真っ青

リンゴ噛むと摩擦が聞こえるマットの中でも

黒塗りの親這い上がる来世の穴

舞うほど沈む庭いつから粉だったのか

枕にお手玉入れた人為の暗い午前

懲悪の具合はどうだ履物屋

ラジオ絞る唾に混じるワルツを聞くため

象が重い問題文持つ風上で

常に後ろから来る祖母汁物を提げ

怪異の腹著しく濡れ境を彷徨う

ゴーストタウンのモーテルで銃の昔抜く

火と客重ね紙芝居にメモしてある死者

後家の腐心露わに反復記号見せる

屋根から溺れる家に訴状のインク香る

天下に大会というものあり結んで開く

袋から出して農薬を模写する

焼いて気付く宮殿にこころから花を

台の上で産み育ててスプレーで殺す

ガス灯は喉より太く吐かれた善

元の玉に戻るならなぜ宇宙の真似など

空洞祝う鉄パイプを雄たちは囲み

心電図にガンジスは遠い叫びの一種

パスタみたいな歩道にシェフ私服で飛び散る

ミサイル何もかも突き破り除外された軸

アルコールの池に浮かぶ人形の胴

図を重ねる方向に光る樹形の祖

色以外すべてハムの祠は密室

我が子かわいいバネの大群だ吹き抜けを好む

鳴き声印刷され鳥もろとも地表覆う

溝が巨大なカタカナであるようみんな祈って

麻痺を内に秘めた柿ごと切られる墓石

ビル取り巻く体全体でさする愛玩

小さな町の祭りに音なく粉噴く花瓶

基地に渦巻く冷気の右は厳かな脳

尻の断面に鬱然と尻座りに来る

小学生は表裏一体に雨を潰す

呻き声は山に跳ね返り受話器揺らす

錆から鉄棒引き抜く犬の形相まで

古城の壁喰い虫として何度も生まれて月

天地に余る箒を北枕に帰国

歯を軟骨を剥き出す私情の薬科大学

ズボンがぼくを脱ぎ捨てる一切がバカンス