二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2019-10-21

空間に森の圧迫のみ移す

野辺に錠剤一個ずつ段をなしテレキネシス

放送開始のアナウンスいつまでも団地に

水銀に浸され脳は馬の庭

天使の巨大な輪三つ縦に川を匿う

暗い部屋包丁で暴くリボンの夢

黒衣の男女しかと群れ川底の底たる

電線広がり垂れてくる曇天の糊

民は疎開せよと頷き黒目を入れ替える

自我サクサク焼き上げ歯の並ぶベルトコンベア

呪いの丘に妨げの金属が鳴る

蜂の巣覗く目と合う地底の釜の胎児

かさばる紙離れつつあり澄んだ川

老境どの画鋲を抜けば知れ渡る

海亀から海引きずり出す沖の星

ひとりで笑って泣く芝居の耄碌よ繭か

牛の嬲り有限の蝋に深く兆す

噛んで吐く横縞で椅子工場乱す

左右に時計を壊す胃だ逆流が始まる

砦取り巻く路駐も鉄朝日に輝く

砕けた色眼鏡に雨が貘を置く

火を灯せば人が見えて酢をこぼしている

湿りあぐねた毛のお前たちが淫らに生やした

不信の町にドア温かく歪むまた石

人類殲滅して幽閉を遊ぶ裸体

器伏せてある食器棚に逆立ちしている

雨粒ずっと宙に大広間が出来る

燭台の腐食照らされ浮く情死

介入の意志あり夢は鯨幕吐く

溺れて四半世紀を粥として過ごす

踊れ踊れ毒針よ朱に交わるな

馬術直交催す空間は個室か

純情暴かれると手のない握力で未曾有

置き去りの去る方角へ微塵舞う

肉の中の図星を掻き悠久の腕

息愛するとき豊かにラララ稲妻

買い溜めの杖がむくれて食を断つ

眼中の映画館からボンド垂れる

闇爛れて形成さず竹林の僧

机は小説だ吹雪の中ぽつんとあり

血が数えられるほど硬い修羅のいでたち

十ある生命のひとつ首モニターに録る

ふと欠落を示す川の深夜も緑化し

柱まみれの地下にメガホンで異国語撒く

気温二度の夢へばりつく防火扉

靄に瓶がある以上放つ天にも錠剤

友ら浮力を互いに有し高鳴る宝石

黄泉を逆さに搾る民家の円錐形

依存せよとなぜ呻く銀河こちら側で

儚くして村の成り立ちの舵を濡らす

想像の鳥乾く池二重括弧

髄露わに見せしめの独楽を舐める小姓

潔癖の笏に指折るサナトリウム

無理だから燻されて藻を吐いている

前者として土俗痺れ核なす枯れ葉

触れては虚ろがる固形物に角を与えよ

本分厚くて当てもなく墳墓群に混じる

顔面広大に許し合う蝋の眼鏡

鳴く虎の迷いを目に移し彷徨う

暑い湖畔に惨めな者から光る雑魚寝

腕洗う工場には暴力がある

テレビに意味そのものが映り散らばるシラス

口パクで血を懐かせる歌手の墓

濁音が降るイヤホンは電線から伸び

なだらかな枕へ指が離れゆく

損した旅館の女将が立つ用水路に蜂

知らない競技のボールにも溝深く脱落

稲穂型の骨を王族から毟る

体の前全部が膨らみ地球を成す

白髪をしごくと川に着く俗悪の齢

カーブの先に半身抱く村助からない

歴戦の眉凍りつく命の月

インク透けるほど薄く儚くなく微光

少女の瞼を引く大穴に毛皮の球

廃人たち硬直し対岸のカヌー浮上

ビーチパラソルそこだけ黒く稀有な宴

卵だったかもしれない道振り返ると雲

糸引く吸引終え直立の多指を愛でる

入り用に桶割っておく生誕祭

稚魚を流す大人が叫ぶ砂漠へと

栗すりおろすまろやかなぼくらでありたい

鳥はすべての骨失いシャーレにまんべんなく

麻酔銃がもたらす平穏百合開く

謎めく真っ二つの星柱状黒は内在

浮遊するドリルの空爆下で縄跳び

数珠繰る毎幼少期へ雲泥を乱し

靴紐引けば靴が来る米撒き散らし

絵画と女の服飾られ真新しい洋室

迂回して水暗くなる同じ場所

電池揺れる妊婦と試験管の曲面

御者次々呼び金貨の不定形を握らす

狂うと書かれた立て札遥かに流氷騒ぐ

ポストに枕を突っ込み不眠の蜂嚥み下す

寝室に同情コピーして並べる

飛べる空にクレヨン減らす阿弥陀

テープ剥がれ辞書の重みが降る予報

母音募り産声ばかり流すラジオ

ここに鈴は遺失はあるかと兵の御霊

街定かにペンチを配し午餐せよ

愛も知らずパンを刈り取る鎌を買う