二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2019-01-21

角砂糖を報告で満たす結社の通路

定規は処分可能水で薄めてポストへ

舌の位置に石段付けカスタネット打つ

浮遊物は春を明るく妨げる曲

傷として鳥裏返す下も空

シャベルで人工ダイヤ混ぜる音か光か腰は

真紅の猫広くなり街に物陰造る

歯並びと同じ多産の窓を噛む

犬に十六方向へ砕ける犀川

薬になる髪抜かれ賑やかな孤独

無冠の幼帝雨中に視よ原野の墓を

原色塗り潰し合う老婆たち淫ら

修復過程の鋭角咲くこちらは人間界

漆塗りの逆立ちついに椅子と関わる

業火書くとふるさとに似る備考欄

もいでも生きるからもがれた海漂う頭脳

指にリボン巻いて青くする葡萄の房

宙に骨を照らし軍人が反響する

灰皿に二人羽織が冷めていく

流失ときに悲しい窓越しのヨガ

痺れて待つ支局の裏にもある重力

ねじられて更新世に浮く笹舟

熱があるから早退して渦巻いている

森は消える来週まで薄い我々

眠りのなか友と呼ばねば柱である

チェロ弾けば屑の星から瓦礫が降る

童の肉定まらずブルドーザー来る

図鑑を表紙から掘り二色刷りの環礁

身空は溶けた鉄輝くとき薔薇を枯らす

過密な街でライム搾る霞の話

監視下の観覧車に持つ対の骨

床こする逆立つ髪伸び続ける限り

ルカに問う洗い晒しの土偶握り

薄曇りに鳩の白さ嗚呼脳が浮く

手札切る埋設された重箱で

微動はする兵グロテスクに後翅照らす

化け向日葵を寝言に添え最後尾とする

毒矢飛ぶ糸ぶら下げてギターの上

散るとは残すことそのうねりを磨く白夜

謀反という誤差の範囲に食い込む都市

ギクシャクと水晶現る独居房

峰の土葬に手を貸せ赤の黒の他人

蛇は九の字に身を曲げ極意とは無縁

縞プツリと未解決リーディング事件

パンを焼く火は紙を紙は詩を吸う魔女

見せしめに我を忘れておく日課

綯えば綯う古着の城は縄ざかり

人家は香るのみ梅の先に瞬く軒端

色域に西の鐘鳴るピアノ曲

男ら焼酎を囲み波紋の中央の屋台

ピンクの部品破壊した百の子供のサンダル

滑舌の遠く交わる習い事

雨は残酷に刀を抱く妻を照らす

腐る足を浸せば奥行きを持つ蜜

疑いが膜を生じて迷いの森

薔薇よ薔薇よと鳴く踏切を縦に見る

凪の記憶薄れる仮眠の筆記体

バケツに犇めくウナギ溶け出した浮力かも知れず

濡れた壁を不成立と見て通す門

空疎な関節何かが発祥して消えた

同じ朝に挟まれて途切れたシャワー

媚態に熟された皿へなけなしのフォーク

妙案であるから野を征くガードレール

砂の簾掻き上げる十二単の眼に海鷂魚

川辺の客皆健やか茶杯の浮沈を得よ

雲ひとつない死後に熱引く祭り

窓外せば穴ありしかと散りゆく雲

蜂は露台を出ず派手な祖父がぶら下がっている

農具寄せて巻く最愛の小屋淫らに

仏が鳴く虚構を軸に回る町

指から垂れた鶴をその指で繰り返す

惑わす印結ぶ複製時代のカーリー

熱い泥を枕に薄く鞠の産毛

鬱蒼と翼繁らせ花みどろ

虚無僧の乳に房持つかぐわしく

念仏と耳浮く未詳の聖なる沼

脱いでも独りではなくわ・な・な・い・て・い・る

木目以外はだが木目は寝て覚めて他界

朽ち飽きて寺幼子に宇宙書かす

面妖な発芽を包む地下水路

拍手送る水掻きに鮮やかな鱗粉

旧都を説ばかりが深く屋根して根源

ならず者来て絞った袋から豆出す

砲台に山河なく名を失う身

梢ニタリと未熟な絵の父めき朱の月

随意の串何も貫かず一である

鐘を電気で断つ胸の辺り服は着られ

果実に佳人の目鼻なく糸ばかり黒く

海鳴りに明くカナリアの半濁点

山滲ます猿の思い出に猿がいる

是も非もなく地を割り垂れ下がるカーテン

花月唸る吹き溜まりに処女強いて忘れ

湯豆腐を午前が憎い箸で捌く

小指の分だけ軽い手で拝む似た背骨を

オリーブに螺旋の傷を打つ氷柱

床だから前菜が夕暮れに濡れる

果樹含み甘い山を待ち構える鳥居

インドの僧振り向くと旗靡く行

鞘の中に太らせた赤子を引き抜く

根腐れの膝を蒸す部屋から爆竹