二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2015-06-16

奥に響く渦が見えるかいお父さん

ボロ切れから踏切鳴る寒かったんだね

カーテン巻き取る産毛の塊みたいな息子

旅行者美しく網を引く土曜の時化

板巻くと遠吠えに似て犬が来た

金属が垂れてくるゴルフだ緑ってきれいね

個人事務所からなる熊煌々と湯がく

光なき磁気の粘りに似た曲線

溜め息吸う蛙を嫁に太る日陰

いつか口を滑る石今は猫の意味

悠長にダイヤのマークのガスを吸う

ノートの繊維えぐる目が近い夏の罫線

山脈の何が耐えたい湯を沸かす

ただの洗いもない透き通るばかりの肘

灰色の路頭に遠く空威張り

人格を覚えて奥へ墨流す

狂わせておけばいい夢に手首浸し

沈めば楽しい水たまりと舗装の境界

続きはまた今度にしておくムジナの群れ

月あらば命を抛て糸引くほど

高層階に液入れて孤独の調べ

苦になれ苦になれ縦に割られて浮く異物

長くて吐いた昼に紐じゃらしをして遊ぼう

意味捨てても黒い木箱に春が来る

念じるほどのクジラでも憂鬱は敵だ

蔓従う小舟にひとつ槍乗せて

板張りの爪すら締め付ける悲しみ

水流に逆らうまま発音を正す

腕の中を花がまさぐる昨日とは逆に

ドットの謗りを離れた緑の森の窒息

衣服散らばる床のヌシは蛇だった玉

南京錠の穴の奥へ生き物滴る

今は肉だが騎兵隊らも歌が好き

嵐の枠を釘で打つもう歩けない

果実真っ青に潰れゆく食洗機の空

小瓶に塩入れて押すレター・レターはどこへ

土の首洗う窒素のドームは正午

胸をよぎれば苦境となる刃のグラインダー

粉末状に再開発する湖畔の町

振袖に砂糖を寄せて盆粘る

乗馬の意味を知らない柳吹かれて真緑

星のメッセージ実験動物へは点字

東の巨人のサンダル拾う水芭蕉

物置動く徘徊へと警邏の耳元へと

先輩への憧れが土星めく人倫

乾くタイの新聞の皺に山河を見る

不得手の恋密室にて今一度夜

心底春草木も塗り固めてしまう

一角獣だった額をさす夕刻

歪な豆腐を嗅ぎ疲れてゴム漬けの日々

施工業者などいない川の穴は生えた

運べ我が手を竹槍まで星雲越えて

寮母転倒稲妻より虎をかばって

鉄などひとたまりもなく曲げテナガザルと樹下

仮初めに河満ちて表皮を渡る

抱いた夢に結ばせ影は怒りの座

押して戻らぬ氷河期死ぬまでドーナツ食う

祭りがなく本を誘拐して食った

膝打ちがてらのマーチが肋骨吹き抜ける

落盤の写真に滅ぶ塔写る

豆を甘く煮てきたわね分かるわ雨だもの

吊られた廊下に風 ニワトリが鳴いている

宿らせて星屑幾重に鉄柱吐く

泣いて夜霧に変わらんとする峠の森

籤で決めた夕日役浮いたまま腐る

見えなくなるまで手を振る憎悪の山小屋から

セーターを脱ぎ音声の石を投げよ

傷だらけの孔雀に瀕する砂時計

姥捨て山にも日だまりは生きて償っている

紙でくるんだクリームを地下鉄で運ぶ

分厚くなる蝶夜会に犇めきたくて

蜂を匙で掬う恨むなら母を恨め

紐踏まれて明るくなる開けられたドア

淫らから取り外されて庭の塁

戸のない草靡かせ吸う息箱へ狭く

窓一に牛六砂は皆殺し

高速道路にベッドと雨の予報がある

なめらかなライオンへ白菜むしる

絵葉書の干潟に種を撒く介護

泥舟から突き出る兎の耳百本

空輸の荷に焦がれた胸を書き殴る

海があるとは乱暴な誤差だ書庫の夢

夜明け前謎の映像膝を割る

鳥以外は曇り空の絵ドア押して見る

屋根裏の重機で毛むくじゃらの笛吹く

香炉に棲む蜘蛛震えて営みの仮定

水掻きに字がびっしりと透けて孵化

窓から閉所へ親の手倉のプラモを壊す

文様は水流れず刺股を引く

鉄ベコベコに火力弾く車窓の天井

ふたつのボタンは離れない服が朽ちるまで

陰干しに患者から出る静電気

今は水車を回すためのパン粉を挽いている

十字架の上下にも友達を置く

季節にも毛皮のシャツと皮膚の間

箱は破れ紙ならば花粉・魚卵吐く

形成中断過密なエレベーター垂らす

光沢失せた雲映すべく芝生磨く

筒状の豹滑らかに椅子潰す

蛙踏むとわたしは孤独だと着信