二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2021-04-23

まもなく溺れますと張り紙し遅い昼食

芋雄々しくノコギリで裂く千手観音

泣く子ら夥しく不定形にハシゴ垂らす

個性が死ぬとき音立てている階下

銃口に吸われて知る輝く未来

埋めた星が引く首は数多ある目下

架空の水場を囲う樋がひび割れた静けさ

耐震構造物ふたつ密に帽子を取り合う

最小単位に蝶をあてがう粉薬

未知の言語に話者ひとり絶え間ない絶頂

月臭う腕輪を腕で満たすように

伏せた牛の光沢は指揮者を伴う

信じる目を薬草で燻す連なって

湖底の鉄新しくし続ける生身

宇宙が終わる頃ようやく浮き出す点線

釜の直径いくらか樹木に思うところあり

培養途中の枕引き抜き頭部を湿らす

脊椎で天体磨く不寝番

傘立てに鞭を詰め込む血の匂い

蒸気の届かぬ岬をラッパに抉れば糧

郊外重なり百貨店の内部が帳消し

悲しく偉大な直角が来るだけの工具

白衣の背を外から破る指の舐り

筆跡に蜂が棲む蜜浴びながら

距離を売る少女は遠く廃村に

海の前ってどこだっけ靴下を脱ぐ

家具となる木を目に斧を提げ帰る

小さくならないマトリョーシカ吊る首もない

池の形の正しく家を消費する

電気の茨を冠するテナガザルが焦点

メスぶら下げ金属探知されますように

水晶覗き過ぎて水没する末代は光

氷嚢を押している窓に鉄格子

目印に老婆を仕方なく愛す

雨あらかじめキノコの曲線忘れている

天井から火が垂れてなお暗い港

サブレにリボン結んで潰す故郷の音

カパと開けばプールに波紋拉致されて

塵溜めた桶をまさぐる小間使い

脳を犇めかず在る町をどこまでも響く

きれいなパイプを埋めた今日から回らなければ

孤独なマシンの中は広く卓球台置く

黒い動画の再生続く机下のモニター

下水に似せ着物をズルリと脱ぐナマズ

球体以外を消した愛に等しい地球

山を見て「山など」と言う人二人

カーテンよじれて週末の予定は通夜だけ

御霊棚引く寝覚めの川に常習性

死魚図形として正しく真夏日を指す

下校は紙で出来ていて歯形で終わる

神社に距離が等しいだけのカラーコーン

逆手にペンチ愛おしいもの採取すべく

号泣の直線刻みに来るシャーマン

魔境は尽きず鳴り続ける三味線の上に

別人の記憶で水を薄める滝

机をグルグル巻きにしたドアを叩くは手か

箱の口開けて焚く箱自体と闇

切手を貼った海岸が届く受話器のくびれに

光とポトリが交換できる独身寮

毎秒を受け止める朗らかな列

数字は足さずに許してと死んだ蝶に書く

深奥からしとどに濡れて森のミルク

処女ら密航また密航いかなる憎悪か

またしても切れ目のある集団の猿

発生源に地球規模の山静まり返る

蛇には蛇の形の毒ぼくには孤独

月極の仮眠の位置星形に刻む

いつか望む他人の絵になぞり書きして

燃える寺院の裾に踊る焦げ臭い犬

密葬の柩は常に立ててある

塗り籠めた杖を垂れる不確かな無垢

満開の恨みは地中を鮮やかに

空中を使わず落ちる事後のトランク

彫られなければ木ですらない工業地帯

無を包む瞼開いてコケコッコー

枕を細く割いてもハープではない悲しい

にわかに門が与えられこの世のどこかに家

ハンコで餅を搗く名前より先に狂って

原子核をおぶってあやす湯気の痴態

小説の表紙を突く鶴の方法

重油を吸う穴に歯のある休耕田

盗癖に夜行を塞ぐ砂男

絵か絵皿か眼に合う欠けた昼の暮れ

手探りで地底にくべる人の顔

天界の音は一切虫のうねり

根底に乱視を謗る玉座の黴

同時期の自供に紛れ込む吸い殻

熟女を離脱し幽体ははち切れつつ車庫へ

破れた袋からティッシュ清潔に溢れてくる

許しを請う語尾天井画を空しく満たす

花畑の中に太鼓 中だったのか

月下の海上腕章付けて真横に落ちる

十一本住めば都の生き地獄

視覚を監禁する紙越しにぬるい酢飯

木彫りの呪わしさを半身に引きずる子供

ひれ伏しても冷たい弁舌だこの床は

廃校群と同じ内向きの球なら出れない

割り箸を銜え豪雨を殺す女官

かわいい酢豚が生きているうちに鏡に映す

ファン憤然と回し何か謳歌しただろうか