二乗千年

ꂭꄨꂻꋅ

2019-06-23

呪の解かれた雨天の脳裏に咲く閉所

満天に地獄絵図敷き奏でる皮膚

星の春に柘榴と無花果を回す

自明の壺は山の中に孕ませておく

出土して殴り書きのメモ貫く湯気

霧の町鏡を低くして越える

杖で割るコウモリのひとひらが先

バス沈む上流下流に同じ刀

居間に再び表札があり思い出せない

違和感太る聞き覚えなら今作ろう

殺し足りて感情の庭弔う理事

仏滅の岩ヒヤリと歯だらけの海女

台形に塗られた犬まっすぐに巨大

一卵性の牢に濁りで鍵する貘

生け垣に顎ぶら下げて通り雨

靄引っ込むフラスコに断腸の里

独立したケーブルと見て愛する首

人間心理の奥底釣られていくペンチ

牛の数え方も知らぬ地が鳴く羽根震わせ

欠如も確かに在りブローチは酸で溶かす

誓う鎖の音だけして生米を撒く

レプリカが示す土星は双樹の胤

固い襟へ縫うように穂を攫う鴉

術師が同業者をバラし弄ぶ催眠

録音ボタン押す麓から死後硬直

ドリル刺すとその場で飛び回る精霊

なぜ生きてこの世に鳩を放つ兄

客は撫でる手を箱に適した形に

繭から見る地球殊更噴火で指す

首輪の痕さすり竹取る妻もなく

天変に座席放り出す車中の春

断面が匂いを放つノイローゼ

いずれ滅びゆくもの洗濯機で回す

中空の泥より複雑怪奇に蝉

青白い指紋が叫ぶ紙ヤスリ

弓よこんなぼくを星にしてくれるというのか

三日月に絵の具塗れの炎帝憑く

斑点になる狼藉の前日譚

口から異常に出る砂我渚を信ぜず

地球覆う池厳かに格闘して

参道で蝶と昼を交換する行商

薙がれて食い違う季節持つ山が鰭に

股開かせウサギが死ぬ物語積む

餓死と思いきや心臓がなく天井に穴

死角に鳥遊ぶ爆破のような賛美歌

不明者名簿に濁点残す抜歯痕

包丁ひとつに死のコード千幾星霜

絶交のさなか這うオスメスの区別

ぼかされて腐敗は進む雪国へと

画鋲彷徨う平地に縦が見つかるまで

聖ニンジンのマークに大工ら無情な腰

未読の窓へ四方八方から金棒

前夜から谺垂れ常という力

土持ち上げる腕の根が羊飼いを撫で

口ごもるそこを柩と目指す老婆

達筆に塗り潰され動けないもう寝る

草で編んだ現世を去って水位に就く

煮物から舌出して箸きれいにする

鳥葬へ食い入るように陣形組む

時計の音から離れてばりばり糸剥く

語源に語水源に水があり喀血

捨て犬の皮に毛がある焼け野原

峰にデスクがポツンと燃え飛び回るスーツ

黄ばむ膝に乗せ女を刈り上げる女

既に終わりのない密葬始まり楕円

電磁波絶え間なくクレープおいしくして心

打ち込まれてなお釘は釘の肉体を嗅ぐ

手で輪を作り老婆くぐらすひとときよ

国道を生きたまま壁に飾る孤独

蛇砕けて四角い偶然として集う

友の会散りばめて野山は青銅

女刷られて巨人となる界隈は火事

人知の飛沫上がるかに見えて皿を配る

囁かれ流れ込むアオミドロの愛

祝賀をやめろと回る螺旋の溝だから

蝋の中おいらんとして腫瘍吐く

落涙の距離を久遠と呼び手懐ける

釣り捗らず毛虫のこと考えては叫ぶ

雑巾で川拭きに行く痩せた裸

彼に合うべき焦点はなく砧打つ

笑うたび沼に固まる泡の波紋

球状の赤い亀裂は転ぶ私

迷路に四肢やがて神とは語る驢馬

スコップばらけてある記念である写真たくさん

諦める門がガラスを囲うとき

魔術のぬめり文字化した口に砥石の産卵

空に近い豹の内側から翼

和尚は暗闇から胎盤を見たのかと聞く

銀河にすり鉢持って片目の片草履

資本主義の朝日に輝く豚の破片

窪みを踏む投げた振り子に背を打たれて

ワニ祀るこの辺だった地図を敷き

川に稲妻洗う青年挙手したさに

シャボン玉潰す親たち仮面外し

屋根裏など空に泥を投擲する装置

闇が光るという嘘をトマトから抉る

地割れに煙突巻き尺力なくたなびく

絵図清潔雨を弾いてわたし溶かす

衣服綴じた神経日干しにいつか泣く

必要な菊焼く這う子の喪も美しく

2019-05-16

椅子をゆすぐ穴の底しかし地上である

予期の中に根が天を向く花もあり

歯を差し込まれた鳥体中で噛む空の青

誰にも墓石を担いだ記憶があり水噴く

メキシコから遠くラジオを壊す歌

たちどころにすべてを理解して寝る山羊

煙を不確かな日に寄せて割る狩人よ

嗜虐の円さに従うほど崩れても景色

けもの道来たもの焚き上げ長屋の灯

鉄工所の形に響く声なき声

頭上眼下を一枚にヨツンヘイム目指す

幾重に壁色付き緑を忘れさすか

スパイも複数形を捨て今は輝くバッヂ

尼侘しく跨ぐ光源で肝を照らす

茣蓙きつく巻かれ黒目の奥に立つ

月に泳げぬ骨を接ぎまだ騒ぐ柳

鏡写しに鳥飛ぶ砂の山可憐

髄美しく欺く火花を喪中に乗せ

苛烈な問い百烈に咲く爛れ歯車

工場越え春のヘドロが苦く沢

災いの甲羅浮くべし愛のダム

葉の混雑自ずから編まれ衛兵立つ

張り付いた紙に浮かぶ戦闘機濡れて

二枚で立つ瞳が縦に脱がれたドア

雨と胃液すれ違う迷わずの宮

火にくべれば火になる泡を吐いた過去

脳つぶさに次は清らかな男の駅

夜霧移るアルファベットに形残し

六畳にシトラス香る戒厳令

依存は船底に及び手長の毛が多量

予定地に神具売る旗旗旗地獄

暁雲に廃語満ちて月読も然り

難産の茅葺きに王が来るただ来る

データ欠損部位雅に地も天も喰らう

知性という我が耳にして削ぐ寒気

重体流れて星かも或る世知辛い工面

夜空めくる星がきれいな純血種

膨大な巨と虚交わる錆の塔

一羽二羽と破片発つ橋の黒ずむトラック

うたた寝継ぐ歌らしさとはかの疑う

運恐ろしく赤い実予め潰し

雨後密かに線を絆す柔らかな二の腕

ぼうっと浮かぶ異境回せば即ち貝

餌は無害の鳩を肥やし虚ろなタキシード

泥よこの愛すべき何者かは捏ねられ

介護バスを誰も降りず油圧で減る町

半球の感じ方に目は私物である

チューブ出す陶器の狸の腹割って

森侵す猿の監獄から放送

船クッキー缶に描かれ積み荷は人

肉嫌いの麦藁帽から父の匂い

鳴らせる靴は足首ごとゾンビと踊った

積み木の果て満身創痍の書架冷える

書に豊穣の黒点宿す矛の悪意

ラクダが燃えているんだピラミッド型の夜明けに

老師は成敗され天を討つ逆さの滝か

降りもし湧きもする寂寥にタクシー呼ぶ

扇の鉄流れて谷の秋を塗る

言いそびれてメメント・モリは最も無垢

水墨の内よりまず震えを憐れむ

波乱従え野辺に我は娘の端くれ

学深まる大事なひと皆錯乱し

位置ずれた自習室から悲しい光

私の目の裏側を見る母胎の夜

埋設から疑わしいゼロへの急須の旅

屋上から闇雲に縦線を引く

街灯ぽつりと名付けられ都市であるやむなく

地滑りの走狗にしては厚い氷

焦げ跡を経て龍と化す脱衣の息

残響が闇より白き蛾を濡らす

枯れた紫陽花陰に広げまだ舐められる

無地の旗に過剰な誰か巻かれて熱

神輿捨て蔦巻き添えに下る列

山と降る雨ふたなりに狐めく

処分待つタランチュラから愛の液

ノートの罫線突然身に感じられ打つ

常緑の犬賽の目を余分に持つ

ビーカー型の草原あるばかりの蜂起

国見ケ丘の不定形詩群は熊が好き

外出後の断絶は光るから消印

星減るほど深い鳥産む廓の舞い

奇面の鹿からくりの手形降る狭間に

不意に湿る時の不意は道すがら語る

象からいくつ豚取り出せばしぼむのか

光を吸う太陽の裏に脆い梯子

風吹き寄せ墓穴へ注ぐ柱にする

十を九と見る目ひとつに血を吸う夢

偲ぶほどに轟沈し続け沖の暗部

揉まれて奇襲もよいものミンチのこころに棘

雨つるむ楽園異常な管見せて

視野角を超えて耄碌の版画浮く

土抉ると秩序出てくる泡のなりで

種吐くぬるさのサンダルに果肉くねらせ

血をはじくドームに即ち類似しに

古代にいるはずの従兄弟から紙飛行機

海から粉が立つ数という概念乾き

歌揉み出す袋から黄昏にはぐれて

ひとごとに香炉が溶けたビルかぶる

娼館へギターをホラーと銘打って

呼べば揺れるフックに巨大な影釣り合う

2019-03-03

列を乱す茄子に無用の唾を飲む

馴染む空と道に噛まれ老一点自答

絞られて水に閃く闘牛士

机にも下があった今は野にある

石飼いの倅の爪ばかりよ布団の山

語り部に鍋繋ぐ砂漠までの鎖

拉致に揺れる風鈴を天袋は病む

天の天たる量黄も然り機神起動

陶器の壁に鈍く息漂わす帝

フフと昨今冷ます玉ねぎの熱っぽい自我

味噌と淫らな衝突を騎士それも叙勲

真意のなか幹たくましく浮き輪嵌められ

瞳孔の樹脂で再び森を瞑る

エリザ朝へ自販機ヴーンと遡る

均衡を蛙に取れば止む命

散々に霰犇めくトートロジー

兵雇われ苦いと感じる火口の城

逆さに持てば墨垂れる絵の美しい渋滞

なお杖の詳細は追って伝えるジャジー

己を轢く都内地下空洞の容積

指こめかみに立ていなくなる武人の妻

天ひときわ高く光る天文台

草を食む野うさぎの裏腹は団地

墓地すれすれにジャージ脱ぎ捨てられ抗菌

水曜十時に惑う自作の牛の午後

乙女の肩に川嬲られ手に騎乗録

図表は石鹸を包んだ食人の島で

草原の黒さにハッとしたまま飛ぶ

釜茹でにレストランから十字光

踊ればふたつ此岸ひとつに劣り出す

刑に塗れた首そのまま苗落とす侍従

聖剣おんぶして篝火谷越す村娘

花揺れるまたの名をブラフマーストラ

流砂を吸う井戸の真上に怨みの玉

視床下部を占めるゴム・鉄・ガラスの一座

舌じゃぶじゃぶ洗う海が甘くて無心に

円卓に張り裂けた胸の恋飾る

式のように外へ断髪を招くコブラ

静かな部屋にチーズが辛い明日が来る

日を細め肉の話を引く扉

長い髪からドサリと鉄軽んじ合いましょう

夢に膝だけを見て知る曲げ伸ばし

たけなわの小皿に阿片漬けの沢庵

結合の意味塞ぎよく笑う嬰児

辻に立つ青って真っ青な罪でしょ

終始鳥であった花壇への羽根の刺しぶり

毛のように納屋から抜かれ口笛吹く

靴縛られ複雑な痕が付く黄昏

底無しの盲導天に橇捨てる

金品の影数多に漢字の発生

次も同じ樹脂の滝見る記憶の旅

個室にメリーゴーラウンド炸裂する疫学

長靴立つひとあるべきはダムの音

号令も遡る銀の垂直を

客は命にぶら下げて犬小屋に棲む罅

ぼくはお前らが嫌いな首肯を続けている

近眼の胸借りて果てよ密告者

爆弾みたいな夕べに竹編む老婆の美

里散る里の限りある一膳のかたち

祖霊潜む霧深い臓腑から叫ぶ

昨日を焼く火中の栗も水を湛え

前例を見よ低い列成す職員ら

未来と名付けた植物すぐ根の他方で覚め

トランクの護符艶めく王殺しの派生

四輪の太い柱で桜打つ

饒舌が覗く賽銭箱の次元

ガラスのドームに干物されるがまま靡かず

踊る手足の鞭持ち牛歩かせる歌

クリオネへの愛を砂に打ち続ける鍛冶屋

看板横から見る中世騎士等しく行く

新緑のカマキリ剥けて遠近法

涅槃の桃薄目を塞ぐ小川に冷え

地図のパズル一枚ずつ真下の海開き

装置の意味は手のひらを逆さに取り付ける

小麦粉倉庫サクサク後頭部でほぐされ

喉から手が出て邪魔を掴む全ては枝

毛があり出口のない筒から足出す

絶句とは程遠い壁だ街は溶けて

輪切りの牛に隙あり多湿にして笑止

ビターな死体トランプ裏返すと消失

妙な発音飛ぶ鳥の跡を騒ぎ続け

洲と洲にいて祖母の味するパスタ開く

一切れが持つ億の結び目に鼓動

痛みを伴う風は初夏に紅蓮に吹く

不文律暗く縫うべし豚と茄子

針の形を思う断面に砂漠の空

肉付けに飽きて兜を転がす雲

地の果てに稲穂が火を焼き返す実り

脆い森の庵で解く魔神樹脂説

ブランコが喪失の弧を描く町

ヘリの真下大気に触れる懐手

人口開くすべてをおいしそうと饅頭

雷に透ける服・呪詛一覧・皮膚

兵逃がせばウシガエルの体内で鳴く

ズブリと立つ妖気にランタン下げる下駄

田にアメーバ書く千回誰と問いつつ

轢かれた司書へ徐々に満たされるコップ点々と

屋根散って降る優しい目に飢餓蓄え

ポシェットからステッキ飛び出す主軸として

東洋の銀河は発酵した生体

2019-01-21

角砂糖を報告で満たす結社の通路

定規は処分可能水で薄めてポストへ

舌の位置に石段付けカスタネット打つ

浮遊物は春を明るく妨げる曲

傷として鳥裏返す下も空

シャベルで人工ダイヤ混ぜる音か光か腰は

真紅の猫広くなり街に物陰造る

歯並びと同じ多産の窓を噛む

犬に十六方向へ砕ける犀川

薬になる髪抜かれ賑やかな孤独

無冠の幼帝雨中に視よ原野の墓を

原色塗り潰し合う老婆たち淫ら

修復過程の鋭角咲くこちらは人間界

漆塗りの逆立ちついに椅子と関わる

業火書くとふるさとに似る備考欄

もいでも生きるからもがれた海漂う頭脳

指にリボン巻いて青くする葡萄の房

宙に骨を照らし軍人が反響する

灰皿に二人羽織が冷めていく

流失ときに悲しい窓越しのヨガ

痺れて待つ支局の裏にもある重力

ねじられて更新世に浮く笹舟

熱があるから早退して渦巻いている

森は消える来週まで薄い我々

眠りのなか友と呼ばねば柱である

チェロ弾けば屑の星から瓦礫が降る

童の肉定まらずブルドーザー来る

図鑑を表紙から掘り二色刷りの環礁

身空は溶けた鉄輝くとき薔薇を枯らす

過密な街でライム搾る霞の話

監視下の観覧車に持つ対の骨

床こする逆立つ髪伸び続ける限り

ルカに問う洗い晒しの土偶握り

薄曇りに鳩の白さ嗚呼脳が浮く

手札切る埋設された重箱で

微動はする兵グロテスクに後翅照らす

化け向日葵を寝言に添え最後尾とする

毒矢飛ぶ糸ぶら下げてギターの上

散るとは残すことそのうねりを磨く白夜

謀反という誤差の範囲に食い込む都市

ギクシャクと水晶現る独居房

峰の土葬に手を貸せ赤の黒の他人

蛇は九の字に身を曲げ極意とは無縁

縞プツリと未解決リーディング事件

パンを焼く火は紙を紙は詩を吸う魔女

見せしめに我を忘れておく日課

綯えば綯う古着の城は縄ざかり

人家は香るのみ梅の先に瞬く軒端

色域に西の鐘鳴るピアノ曲

男ら焼酎を囲み波紋の中央の屋台

ピンクの部品破壊した百の子供のサンダル

滑舌の遠く交わる習い事

雨は残酷に刀を抱く妻を照らす

腐る足を浸せば奥行きを持つ蜜

疑いが膜を生じて迷いの森

薔薇よ薔薇よと鳴く踏切を縦に見る

凪の記憶薄れる仮眠の筆記体

バケツに犇めくウナギ溶け出した浮力かも知れず

濡れた壁を不成立と見て通す門

空疎な関節何かが発祥して消えた

同じ朝に挟まれて途切れたシャワー

媚態に熟された皿へなけなしのフォーク

妙案であるから野を征くガードレール

砂の簾掻き上げる十二単の眼に海鷂魚

川辺の客皆健やか茶杯の浮沈を得よ

雲ひとつない死後に熱引く祭り

窓外せば穴ありしかと散りゆく雲

蜂は露台を出ず派手な祖父がぶら下がっている

農具寄せて巻く最愛の小屋淫らに

仏が鳴く虚構を軸に回る町

指から垂れた鶴をその指で繰り返す

惑わす印結ぶ複製時代のカーリー

熱い泥を枕に薄く鞠の産毛

鬱蒼と翼繁らせ花みどろ

虚無僧の乳に房持つかぐわしく

念仏と耳浮く未詳の聖なる沼

脱いでも独りではなくわ・な・な・い・て・い・る

木目以外はだが木目は寝て覚めて他界

朽ち飽きて寺幼子に宇宙書かす

面妖な発芽を包む地下水路

拍手送る水掻きに鮮やかな鱗粉

旧都を説ばかりが深く屋根して根源

ならず者来て絞った袋から豆出す

砲台に山河なく名を失う身

梢ニタリと未熟な絵の父めき朱の月

随意の串何も貫かず一である

鐘を電気で断つ胸の辺り服は着られ

果実に佳人の目鼻なく糸ばかり黒く

海鳴りに明くカナリアの半濁点

山滲ます猿の思い出に猿がいる

是も非もなく地を割り垂れ下がるカーテン

花月唸る吹き溜まりに処女強いて忘れ

湯豆腐を午前が憎い箸で捌く

小指の分だけ軽い手で拝む似た背骨を

オリーブに螺旋の傷を打つ氷柱

床だから前菜が夕暮れに濡れる

果樹含み甘い山を待ち構える鳥居

インドの僧振り向くと旗靡く行

鞘の中に太らせた赤子を引き抜く

根腐れの膝を蒸す部屋から爆竹

2018-12-05

恩人が狂うなと釘刺しに来る

拍手と燃焼が似ていて耳貫くねじれ

髄液降り髄の藪にも欠く五月

大雨警報台所を包み椅子の背

音に似て死滅が示す足の夢

黴びてもラオスへ皮下に六位の旗戦がせ

涎がドロリと虹を枯らす異議として独楽

左利きの定かに火だるまを置いて

錆乾かぬ陰に強靭な筒を順次

誰に話せばいい肩から手が生えてること

粒孕む土に散佚古書の一部

弾む蛙の血でもぬめる網膜の果て

性愛の銅鑼叩く五つ目の方角

粥食す母系の共食い感煽られ

鳴かず飛ばず名ばかりのアリス詰めた袋

罪のバッヂを茎に刺して生ぬるい汁

湿る童話も生き恥と絶え間絶え間に顔

空一面毛布悲しく鳴くところ

鳥かわいそうに脱ぎ捨てられ衣類は明るくされ

雨天の芝にそれまで座高だった円錐

看守の目は粗く風通すメトロノーム

犬も唾を持つ生き物か洗濯機真昼

ふるさとの破片は互いを映す群

扇の骨次の柱を朧にする

遷都ためす床下に沼を遺棄して

戸棚を開けても外走った形跡に割れて

目次塗り潰して付喪神を拒む

砕け散るねぶり不足の能舞台

ひとはひとりでは生きられな、ホテル解体

忘れよ鉤爪を天狗の面を道は細い

砂の際限に集落おやすみと伝えて

神社刷られ足場にたかる薄曇り

軸啜る老婆は神に仕える紫

紙を塊に存在は奥の暗い車庫

常を空費して波打つ仏壇の外

ミヤコイビツの花咲く都歪に練る

黄泉比良坂くさらせるとねむらせるのあいだに

褒めながら血を抉る指でできている

人倫匂う枯野に貝名を捨てても苦しい

染みた地名全部を指し唐突にヒヨコ

星明かりに樋傾けると越後屋来る

ステロイドベルト鳴くそれも過去乾いた亀

忘白の瀬にラジオから鬼吸うサイレン

ワニ棲む快楽に火を灯せば広がる余白

予約されて地下道にこびりつく平日

積めば万葉集らしからぬ殺風景だ飛べ

かつて鈍く賜り明き盲の路傍

姥捨て中止ひとりでにねじれるから

グッピー眠る静かな肌人間の領土

奇しくも銀河の雪解けにマッドマンやや大きく

胴から下三体の魔女雨より身近に

自動生成の行間持つ地方都市の施設

薬溶かす猫洗うぬくい火の眼底

病欠の写真にドレス着たマネキン

味が湿り輪となる星を身籠る男

油足せば不確かな監視でも輝く

来世を前借りして囀るゴムの手袋

歯片賭場に婦女冷えて待つおまじない

屋上から散りゆくもの皆正三角

色褪せるちぎり絵のまろやかな研ぎ師

軽薄に寝起きして我が身を花びらと知らず

紅玉置き滅ぼす村から村へと蛇

本日は昼古典の煙に霞みながら

重婚家系の図と喉は剥き出しにブローチ

川清らかに足あと殴る手術痕

何もなければ火花開くコンクリートの丘

野良神鳴く意志持つ餌の光奪い

雛人形に角ねじ込み平行世界は炭

他者の尊い肘を抓り呼び戻す砂塵

万象の姫罅割れて金歯見せる

時計の針こちらの盲点の中に折る

広く低く暗く床下に舞った跡

根溶かし尽くし抗い給えと森焼く番人

人由来の霧断言の美貌裂く

ミンクの切れ端が山河に深い鍋も暮れる

ぶら下がる鉄ドロドロに渡すドブ

雹窺う現場に愚民と土を盛り

贅なり肉なり小屋に痛く咲く抜き足して

知り合わなければ羊は存在かもしれない

集団深呼吸して具みちみちと童謡

吹き消せば奇遇も飾る風鈴館

族長が消えた角笛を今産む祖母

滑り台からカプセル親代わりに受け取る

ドーナツ食うもあわれか鳥影だとしたら

タクシーの外は百の目を閉じた東洋

囁かれ胸が苦しいトカゲを飼う

北極の背もたれが指す上下の核

月自体が叶う幾何学の逆さ神殿

魚に指があり指しか見えない海

水深に粉踊らせて災禍の図

石嫌う暗室に等価に彷徨う御魂

命に背きヒトの形からヒトの文字

寂寥は影も形も青びたし

亜熱帯に深く刺さる谷眠りより

呪いは羽根になり飛び立つ蓑引き抜いて

昔犯しの旅一枚に陸と海

やや臥す豹の角張りつつ容器めく分校

まるで否定そのもの未成型の銅貨

片目ずつ過去に置き草原の木よ

呟いて色を足す天磨かれて

2018-09-11

盆地の妻狐の知るところとなり苔

古書店没落本棚本噴く甘い香り

下着を穿いた少女にトルコから花火

宇宙の奥に痛む鉄正しく澄んで

夜の世界と言い言葉に窮する打診

暗幕投げるはっきり遠くに午睡の髭

虫達参加背中に背中があるように

死蛾死蝶チャキチャキ鋏を振りかざし

裏手を底にせよ切り離して誰か以下略

自滅のメ東西南北あぐらの中

鹿に青い鬼の仮面シテシテと鳴く

参りがてら賭博のペースト状の磯

粉バッタが跳ねて無番地の村が子宮

肉類の全きカバに死角なし

うら若き乳房奇数に神輿担ぐ

要人ワタまみれに室あり図工に背き

百人角笛吹くただひとりを千々に集めん

遥かな州都より太い茎の内在廃止

反重力雪共々彷徨う木の星

泥ですから気持ちよく危害を加えて

青は六つの面が閉ざし自然へ一つの賭け

数珠エレベーター鳴る火元に国を残して

窓も鏡も同じ末路に馬霊渇く

人口爆発的爆発海中に伽藍

田んぼが高いぞたちつてとうとう死んでしまう

マンション灯る風上に無言のサイクロプス

近親姦の密度に水きれいなまま流れて

母子手帳の母と子と手ばらばらに帳

背く隣家のペンキに等しい蜂の量

ヨット切り抜いてもヨットの人命吸う日没

灯籠が贄のけだるい廊下に春

拳の中のアサガオ日記に死体を書く

バス二台まったく一台は寺壊す

塗れた婦女髪から這い上がるも蓋せず

僻地の錆通行止めにされ色付く

果実の深さに種も笑う緑の正体

坊主の殺生済んで大きすぎる鉄の輪

紀元後に女の籠を封する虹

貴様ら融かす泡有為転変従えて

孤島はこの病の通過点である噴火

銀の針で突く西へと仮面の暗がり

爆心に愛など民は下位互換

不名誉でしょうか銀河の果てムカデは殺して食う

野に目覚める桐ダンス花吹雪浴びて

東雲の靴ひとづてに群れる

板もないのにブランコと呼ぶ双子の背骨

赤青溶くラオスで透明にした水

象の背中でボート漕ぐ我突き破らん

森の唇ぜんぶ笑う絵がたくさんぼく

女体盛りを画家に食わせビスケット市場

タイ語キャスター血を半笑いに咀嚼やめず

馬が曲がると舌打ちして溶け合う眼差し

いつかも化けていた乾きに砂壁の卅

緑と心臓それに椅子なるほどと熱もつ

マダム閉ざす手紙の末尾に吊り天井

毛根にとぐろほぐされ照る非番

みしみし愛しています放送禁止の男

左折禁止孤独な町に米が足りて

鉾滅法に並ぶこと森として姦として

サンダル澱みへ蹴飛ばす千年後にファンファーレ

作為に満ちて浅黒く顕現する乳房

添い寝して光らす松に嵐の夜

国際の板はべらせて山の張り

亀間近に痛いかひたいか通らせる

四肢に穴も根も葉もあり女人禁制

容積を球最大にかなしむ寮

岩場飾りに来た楽しいからこころが無で

未知たるべき寺の可燃性へ降る雪

新春の液体は諂いのグレー

べろべろと焼け落ちて淡く蔦の目眩

涙くさいキッチンで首ぶっつけ合う

からかさお化け全盲ずしんずしんと叫び

夕焼けの中へ鶴の足しっかり押さえる

わたしはこんなことのためにゴトリと辞書が以後

しめんそ歌聞いて固くなる液はこぶ車

ランナーではない継ぎ目をにゅっとパスタ茹でる

竹串を持つ手に己の影かぶせる

古傷が螺旋となり受話器から逃げる

断片くべて探偵ふたりは生きるだろう

口臭に寒さを噛み鬼火逆しま

小舟などいかが塩鮭をつまりその

女事務員泣く左目から倒立体型

床ぬるくするみんなで嘘つきあって

嘔月嘔日写真から主語切り抜き失踪

目の奥に岸の光を研ぐ戦慄

酒乱に毟り取られた花以外が雪渓

絶叫舞台の幕破れ一反の裸婦

軽い人形こぶし大拒絶大鉄鋼

流星泣きながら鞭打つ病気だから

封鎖に雨する古代魚の博物誌も鉄か

カナ表の裏真っ黒に他我で潰す

蝋の袖にいつか招く夥しい芽

日に整形のメスの冷え切り取られていく

先祖と枕投げしてから金屏風が消えない

見え透いた角部屋どこまでも進める

丸太縦横に書斎を刳り快適なソファー

視力視位視座内部より隈破る

中身がゆめに見えて皮膚の外側がぼく

爆発も浮世も花の妖精界

階段の脱皮を照らし大局的

2018-05-06

ない放送に浮足立つ地べたのもやし

豊穣の胴体静止して騒ぐ

縄に殴打の痕くっきり冥府の地番

歪む耳から声がする一抹のそれと

宿り木の粘液時雨れ狭き晩餐

白柿狩る瞼この瞬間も皮膚

石沈むわらべうたの輪に有識者

前方への堕胎鳥居を突き崩し

闘技場の勝者我が背丈を水深とせよ

蒸気卑屈に糊面を飛び回る夢見

伐採の手を群青の家畜に拉ぐ

山の名ズラズラ書き記してありエメラルドの目眩

画布手に嵐を全身に豪快なる卒倒

牛は強靭に白く聳えた神経の塔

墓守震えて機械的に解読を待つ

堰破る虚飾明かりのない部屋へ

ビル昏れにありがたや自販機も息する

放牧反転してただ明るいばかりだ窓辺

斜めに滴る不謹慎を滅ばせゆくため

身とこころは片町ふたつでひとつの母音

線路は続くよ「神様ぼくを」とパープルに

石柱に暗闇区切られ我が身は頁に

塗料ねじる量に任せ仙境への道

血筋淡き髪に予定日の丸絡まる

昼時々笑う害虫駆除の青年

星の中にいる咎めに末路が五つ

飼育されて猿常に明日の声を侵す

貴婦人らの手に外壁澄み渡る空へ

薪くべる腹から蝶の羽生やし

霊峰側の駅疑わしく川が開く

口減らす先の尖ってない毛布で

調べを残し地下一面に蠢く銀

着ぐるみの指縁取る大地の烈風

居場所がそのまま報復となる掠れた消印

脳裏は地下よぎるは集団プロミネンス

直線プラスチックの差し歯で味わう濃霧

内角の和に本当が少ない島

たるんだ糸切り今そこに山があったような

喰い潰れて枯れ草滅すべきは月

女の歩幅割るケーキをピラミッドをナイフで

隠れ家で切ったリンゴを元に戻す

憎しみの霙が針より近く降る

都市漂う田は上澄みにしてお知らせ

呼ぶほどに赤く工芸極まる盆

触手巻きつく納屋に一滴の海と素人

朱の骨頂から鶴もぎ取られて発煙する

蜥蜴ら繁殖その根に濡れた虎の牙

しかし同時に流れ星と切れ点字がシーツに

電報届くままに積み公共こんもり

自我のまま奥歯揺すれば無縁墓地

夜汽車泡銭の密なる近親らの恋へ

森の先端に池さす凱旋門から絞る

ピアノしっかと舞台握る必定の夢魔

すべての隙間に緑噛み札束は街

椅子に試験管打ち込み真紅の肌の奴隷

模型冷ます明度の近似した山で

十日分の日めくりを抜く泉の舌

俗夫の妻あどけなく凡々と羽化

弱小なまま茜に玉寿ぐ試合

木々や小鳥が可愛くて飲酒篇の目を出す

擬音吐く虹宛所に尋ね当たらず

巨大システム一平面に束ね未開

軍鶏煮殺す愛という字の複雑さ

魂で仄めく大絶倫の町

鼻腔突く勅命次なる花園へ

比喩もなく沈黙して育つ木と脛

屋根のある沼に丸太の所在を告ぐ

死も全部同じ他人が増えている

帯解くとき折れ線グラフの先を思う

屋根編む少女片足は歌の身代わりに

長寿が群れる日地下茎に輪切りの意を込め

曲線美あらたかに老けゆく学生ら

火を焚き持ちゆけば台座不在の在る局部

(ここから2014年)

輝く日没喉仏の奥拝みに来る

流離遥かに澄んで池にとどまる利口

果てしなく勤労に歯牙注釈す

花瓶狭く沈む合唱団棒立ち

無口ならば引き出しにして主語しまう

一説にも犬ではない路上の枕

赤き前哨戦の誉れ手紙をピンで留め

ビール狂の家財皆砕け宇宙論

輪舞の切り絵の手千切る手受け取る手で打ち消す

球根を深読みして苦とないまぜに

愚かなのでお菓子が甘いぼくはいません

青空深く兆す枯木稲妻の中

矢の雨槍の衾で討ち武士ら毛深く燦々

一枚ずつ脱ぐなぜなら彼女は岸辺の波

アンドロメダが目だと言ってる気に触れつつ

脳震島に五本足の駿馬を放つ

鞠が歪でつけない放送へも電力

うねる肉体の謎水に水力が笑って

米を密かにする釜を肘まで入れて

宗教六角形に人命より崖輝く

街とサイレンを分かつ太い線ひとの喪失

道連れに次元を試す飲食街

非十字型の交点拾い円前進

湖底なお沈むシグマに四季絶し

跪くベーリング海はその時盾

術後の嵐にスローライフの天秤鋳造

劣情のままに太陽は流れて裂