戦線に情念図示すべからざる形で
体裁は液よろしくて金具吊るす
声で揺れる近未来のわたしとしたことが
目に差し迫る草の香り花魁を手にかける
死者そぞろに立つ山が増えて秋祭り
枕の数を頼みに嬲る岩場の舟
砂集めてライフル縦に午後弔う
現実ブルーシートはよく磨かれた鉄へ
粉にした十月を飛び越えて絹
山羊操る我が子の紅蓮に石なる母
島を殴る拳を持たぬ鳥の飛来
手が空想を求めている強さの落としどころ
空疎な型を上げて難しい空を噛む
鴎が転がってくる地吹雪無い袖を振る
断食に入る自転車の鍵かけて
接吻を牝馬に捧ぐ七十五日
既に無い窪みで見てあげるよ消えてごらん
苦い日は熟れて近寄る友ばかり
巨大な喪失感雨天の発射台に傾く
消えた樹下に足だけでザーザー怒鳴る叔父