喝の余韻を黙る老師紙やすりを手に
石室の灰を低める蛾の錯乱
町の轟沈に追い付かず水色の樹を見上げる
紙吹雪手品師の住む星も消す
仮の姉の指す小屋に死別したパルス
王国の同心円としてケーキ
棚また棚蛇の眠りをいただく消灯
闇から抜粋した構造で髪を留める
金魚の背と気付かず日傘差しかける
白けた家族の前肢潤う泥の泉
焼いた壷に投げ入れるテルアビブのサイコロ
ひとの高さの帽子来て書斎から簾
聖典の歯形足蹴に悲しむ娘ら
ネックレスで侵す鎖骨まで暗幕引く
吸い込む男街中に街路樹の代わりに
産穢を忌む月下に結合する毒蛇
息詰めた分だけ座りにくる形代
巻き戻すと口に戻るヒヤシンスの球根
曙光屈折土偶の奥のガラス片
怪文書の虫食いを抜く血を芝生へ