舌濁らす稀な水位に閉じゆく扇
お化けの見えている目の丸い舟が次々
胎動する丘陵とリスをこじつける梅
都市の絵二点の間にバーコードのバー孤立
胸に突如広がる潔白北極より
窓とカーテン別々に谷の両端に
空腹の色味はレントゲン写真
チェーンソーのそばに起動中毒の鴎
三角地帯に隔離と落ちる子の寝首
あめつちの鋼はうすくふるえる貝
数珠掴む死とやら冬の参列者
ゼリー通す歩道橋上着まみれのまま
読ませる本が事象である古代を擦る石
雲に押され冒頭へ焦げ臭く布告
土煙の妊娠を悲しむ魚
戦と血を浴びた民すべて生き残る
中年女密集する振り子運動で九時
性欲の大釜ひらくとき赤青
金網の北に島接ぐ背中は父
苔はびこる踏み台に穏やかな座布団